「鋭児郎くん」
「ん?どうしたー?」
いつもの爽やかな笑顔で、何の下心もなさそうに読んでいた本から私の方へ顔を上げた。彼の部屋に遊びに来て早数時間。頑張って服を選んで可愛いを作ってきたつもりにも関わらず、鋭児郎くんは私に見向きもしない。付き合っているはずなんだけどな。はずだよね。
「…その本、面白い?」
「おう!名前も一緒に見るか?」
「じゃあ鋭児郎くんが読み終わったら借りていい?」
「いいぜ!」
そう言って鋭児郎くんは本に視線を戻した。自分の意気地なし。気づかれないように溜息をついた。こう、押し倒してやる、くらいの気概があれば、キスくらいできるんだろうか。いざ実行しようとしてももし拒否されたらと思うと体が動かない。意気地なしめ。
「どうした?」
「わっ!びっくりした!」
考えていた私の前にいきなり鋭児郎くんが現れる。本読んでるかと思った!私の方をじっと心配そうに見てくる。どうしたらキスできるか考えてました、なんてとても言えない。後ろめたい気持ちを隠しながら、なんでもないよと答える。
「そうかー?なんか悩んでる風だったぞ?」
「あははー」
「悩み事言えねぇくらい俺って頼りない?」
その言い方は卑怯だ。顔を見れば眉をひそめた困り顔で私に訴えかけてくる。本当に卑怯だ。漢気はどうしたんだ。
「その、」
「うん」
「…きす、したいなって」
言っていて頭の中が真っ白になって、熱くなるのが分かった。顔も真っ赤になってるはずで恥ずかしい。恥ずかしさで顔を背けようとした時、鋭児郎くんの手が私の肩を掴んだ。
「していいの?」
「え?」
「キスしていいのか?」
ビックリして切島くんを見ると真剣な顔で私を見ている。心臓が急速に早くなってコクンと頷くと、それが終わらないくらいの一瞬で唇を奪われた。唇が暖かい。そっと離れていく暖かさが名残惜しい。
「きゅ、急にしてごめん、なんか、耐えれなく」
「もっかい」
「…え?」
「もう一回して」
ちゃんと確かめて
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