「久しぶりじゃねぇか」
「そ、う、だね」


居た堪れない視線から目を逸らして同意した。5年ぶりに上鳴主催の高校の同窓会へ参加すれば、隣に座る高校の同級生で幼馴染である爆豪勝己に睨まれている。心当たりががっつりあるから気まずい。誰だ、今回の飲み会にかっちゃんは来ないって言ったやつ。上鳴だ。


「おいバクゴー!せっかく久しぶりに苗字が参加してんのに変な絡み方してんなよ」
「うっせ!普通に絡んでるわ!」
「苗字、転勤族ヒーローのサイドキック辞めたってホント?」
「うん、今フリーなんだ」


にへらと笑って言えば、何も聞かずにお疲れと耳郎がお酒の入ったグラスを傾けてくれたので自分のグラスを持つと他のクラスメイトたちも一斉にお疲れと言って乾杯をした。疲れた心に身にしみる優しさ。横で睨んでるかっちゃんを除けば。


「爆豪、怖い、睨まないで」
「は?睨んでねぇわ」
「いや、めっちゃ睨んでるじゃん!めっちゃ見てくるじゃん!」
「てめぇの目が腐ってんじゃねぇか」
「爆豪実はもう酔ってるでしょ」


かっちゃんは酔ってねぇよと怒鳴る。相変わらず目つきがありえない角度でつり上がっていて怖いです。この酔っ払いをなんとかして欲しくて、かっちゃんと仲の良い切島に視線を送るも佐藤や瀬呂たちと盛り上がっている。もう1人の幼馴染の緑谷に視線を送ればすでに潰れていた。早すぎるだろお。誰か助けてと思っていれば空気を読んだのかトイレ帰りの轟が久しぶりだなと話しかけて来た。


「おお!イケメンヒーロー、君が今まさに私のヒーロー」
「酔ってんのか?」
「酔ってない!だけどありがとう轟!」
「お?おう」
「てめぇなによそ見してやがる!」
「痛いっ!爆豪痛い!めんどくさい!」
「爆豪お前なにやってんだ?」
「舐めプ野郎てめぇはひっこんでろ!」
「もうホント爆豪めんどくさい!」


これはもう潰した方が早いかもしれない。かっちゃんのグラスに瓶ビールのビールをなみなみと注ぐとすぐに口をつけたので、またすぐに注いでいけばあっという間にかっちゃんは潰れた。ちょろいぜかっちゃん。


*****


「なんでよ」

小さく呟いてため息をついた。隣にはうつらうつらしているかっちゃん。潰したやつが責任持てとかっちゃんを押し付けられてしまった。最初庇ってくれたじゃん、みんな薄情だ。とりあえずタクシー捕まえてかっちゃんの実家に連れて行けばいいか。かっちゃんは酔いつぶれて大人しいし、さっきみたいな変な絡み方はされないだろう。

タクシーを拾うために大通りへ出ようとかっちゃんに行くよと声をかける。さっきとは打って変わって眠そうな顔で素直にうなづいた。意外にしっかりしてるのかな。私が先に歩き出すとかっちゃんはその場から動かなかった。やっぱり酔ってんじゃんか。かっちゃんの側に行き、もう一度行くよと言って手首を掴んで歩き出した。するとかっちゃんは大人しく私の後ろを付いてくる。ちょっと可愛いな。


「おい」
「なに」
「どこいくんだよ」
「勝己くんのおうちに帰るよ。いい子にしててね」
「子どもあつかいすんじゃねぇ!」
「ちょっとちょっと、大人しくしてってば!」


暴れるかっちゃんを宥めようと振り返れば、腕を掴まれてかっちゃんの方へと引き寄せられて抱きしめられた。酔ってるにも関わらず勢いづいた私を簡単に受け止めてしまうかっちゃんはやっぱり実力派ヒーローなんだなぁと思った。かっちゃんの吐息が耳元に当たってこそばゆい。


「また、どっか行くんかって聞いてんだよ」


幼い頃や付き合っていた高校の頃の思い出がこみ上げてくる。それと一緒にいろんな、ぐちゃぐちゃな思いまでこみ上げてきて涙腺を刺激しようとしてくる。かっちゃんから離れようと体を押せば、逆に力強く抱きしめ返された。


「いいてぇ文句が山程ある」
「…そう」
「だから結婚すんぞ」

てっきりかっちゃんから逃げたことへの罵詈雑言が出てくるかと思いきや、予想だにもしない言葉が出てきた。



「……はい?」




prev next
back