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「それたぶん今年のヒーロー科新入生の爆豪勝己だね」


お昼時で混雑している食堂で何とか席を確保して、ラーメンを啜りながら昨日あった出来事を愚痴っていると友人がそう言った。去年の今頃にヘドロ事件に巻き込まれてた子だよ、と付け足されたけどピンとこない。ヘドロ事件は知ってるけど、ニュースで流れている以上の情報は知らない。
彼女は他にもそのバクゴウの情報を教えてくれるが、かっこいいやら強いやらやけに私情くさいものまで入っている。その中に口の悪さと目つきの悪さも付け加えてほしい。


「せっかくだし紹介してよー!」
「ぶはっ!!」
「わっ、早紀汚い!!」
「変なこと言わないでよ!!
「鼻からラーメン出てるよ」
「えっ!うそ!!」
「うそ」


冗談冗談とカラカラと笑って、彼女は頼んだA定食を口に運んだ。
とんでもないことを突然言うから本当にビックリした。紹介だなんて、そんな恐ろしいことできるわけないじゃん。まず名前を聞いたのも今ここで彼女から聞いて初めて知ったというのに。というか怖いからあんまり会いたくない。


「で、その後は結局どうやって帰ったの?」
「しばらく立てずに居たら警備用ロボに発見してもらえた」


あ、その憐みの目、悲しくなるから辞めて。


 ******


掃除当番で校舎裏の焼却炉にゴミを捨てに向かう。一人で大丈夫かクラスの子に心配されたけど焼却炉は何度か行ってるから大丈夫と返して一人で旅立った。そしてなぜか何度か行き止まりにぶち当たりはしたが、無事焼却炉に辿り着いた。

ゴミ捨て場にはラッキーなことに先客がいて焼却炉に向かってゴミを投げ入れている。私も続いてゴミを捨てれば、帰りはこの人をこっそりつけて帰れば教室に戻れるはず。ストーカーじみてはいるけど、ある意味護身術だから許してほしい。


「…あ!」
「あ?」


先客がこっちを振り返ると見たことある風貌、昨日私を置いてけぼりにした爆豪勝己だった。

うわぁ、気まずい。声出さなければよかったと後悔したものの相手も私に気づいて、昨日の普通科モブと言った。モブってひどいな、この安定の口の悪さは間違いなく昨日の少年だ。


「昨日はよくも置いて行ってくれたな爆豪くん」
「てめェ、なんで俺の名前知ってんだ」
「…内緒」
「はァ!」
「友人カラ聞キマシタ!!」
「最初から言えやクソが」
「だってなんかストーカーっぽい感じに聞こえそうで嫌だったんだよ」
「ストーカーが」
「おい」


はんッと人を小馬鹿にした顔で爆豪くんは私を見下ろした。爆豪くん性格クソだな!こうなったら無視してさっさとゴミ捨てて教室帰ろう。

小馬鹿にした顔をしている爆豪くんの横を通り過ぎ、焼却炉に向かって勢いよくゴミを投げた。後ろでは砂を踏む音がして、爆豪くんの去っていく気配を感じた。これで良し、あとは早く教室戻るだけだ。

振り返ると爆豪くんが校舎の角を曲がった瞬間がちらりと見えた。よしよし居なくなった、と安堵して私も岐路につく。そしてふと気づいた。

帰り道が分からない。

先客について帰る計画だったのに相手が爆豪くんだったことですっかり忘れてた。駄目だ、背に腹は代えられない、追いかけよう。


「ば、爆豪くん!」
「あ?」
「教室まで連れてって!!」
「何言ってんだてめぇ?」
「……迷子なの」
「は?」
「だーかーらー!方向音痴なの!!昨日も迷ったって言ったじゃん」
「開き直んなや!」
「お願いします爆豪くん、教室に帰れない」
「知るか!」
「ひどい!非道!!人に非ず!!」
「うっせェ!!てか、だったら昨日はどうやって帰ったんだよ」
「警備用ロボに発見してもらったんだよ!
……あっ、またその憐みの目、辞めて悲しくなるから!!」


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