51



「あれ、間宮先輩」
「お、1A3人組」



夏休みに突入したのにもかかわらず学内で上鳴くん、切島くん、瀬呂くんと遭遇した。そうか、ヒーロー科って確か夏休みも授業あるんだっけ。通常時も他学部より授業多いのに夏休みもなんて大変、というかタフだ。



「先輩なんで学校にいるんすか?」
「2年になるとね、普通科でも補講があるんだよ」
「はー、大変なんすね」
「3人は今から帰り?」
「うす!明日から林間合宿なんで!!」



そう言って切島くんは嬉しそうに拳を握った。他の2人も肝試し!花火!と楽しそうに声をあげる。青春だなぁ一年生。爆豪くんもこういうこと年相応に喜ぶのかな。
…う、思い出してしまった。この3人がいるならもしかして爆豪くんもいるのか。周囲をきょろきょろと見渡すも爆豪くんは見当たらない。ふと、視線を感じて目線をあげるとじっとこっちを見ていた瀬呂くんと目が合った。



「爆豪っすか?あいつならここにはいねぇっすよ」
「なんだ、よかった」



瀬呂くんの答えにほっとした。なんせ会いづらい。間違いなく気まずい。どんな顔して会えばいいんだ。自分で考えろったってどうせ私の憶測でしかないっていうのに。他人で、それに男子の思ってることなんか私に分かるわけないじゃないか。
急に目の前にひらひらと手を振られて我に帰った。上鳴くんが私の前で心配そうな顔をしていた。



「先輩大丈夫っすか?唸ってましたよ?」
「悩み事すか?」
「うーん、まぁ」
「どうかしたんすか?」
「そうだ!男子の意見として聞きたいんだけど」
「えっ、いいすねその響き!どんどん聞いてください!」
「そのー、うーんとね、真逆の態度を取る男の子って何考えてると思う?」
「真逆?」
「真逆って例えば?」
「(爆豪のことか)」
「え?うーん…、例えば、暴言暴力振るうくせにスキンシップが激しいとか」
「(爆豪か)」
「(爆豪のことか)」
「(何やったんだ爆豪)」
「ちょ、例え話だからね!?なんで3人して黙るの!?」



なんか視線が生温いぞくそっ!爆豪くんに身近な3人に相談するんじゃなかった。顔の温度が上がるのが分かって思わず顔を伏せた。今の話は忘れて!と赤くなった顔を見られないように手を伸ばして距離を取る。もう顔見れない、恥ずか死ぬ。



「まぁまぁ先輩、顔あげましょうよ」
「そうそう、相談乗りますって」
「真逆の行動取る人の考えでしたっけ?」
「くっ、見なくても声で笑ってんの分かってるからな!?」
「まぁまぁ」
「というか俺らに聞くより本人に聞いた方が一番いいんじゃないすか?」
「俺もそう思う」
「俺も」
「聞いたけど教えてくれなかったんだもん」
「「「聞いたんだ!!」」」
「(しまった…!)」



墓穴掘った。咄嗟に顔を上げてしまってにやにやした顔の3人が嫌でも目に入った。顔がさっきよりさらに熱い。素直になりましょうよ先輩と上鳴くんが肩を叩いてくるのがいらっとする。



「もう喋らない」
「先輩ちょろいっすね」
「黙って瀬呂くん」
「まぁまぁ落ち着きましょう先輩」
「そうそう、怒っててもしょうがな、あ」
「あ」
「あ」
「え?ふぐぅっ」



突然後ろから後頭部を押さえつけられた。何やっとんだと聞き慣れた声。ちょっ、前屈状態辛い、体硬いんだよ。ジタバタするも押さえつける力はビクともしない。そんな私を置いて、呼び出し終わったんかと切島くんが呑気そうに聞くとぶっきらぼうにああと答えた。そんなことより早く放してくれよ。勢いよく反抗すると、抑えていたであろう爆豪くんの腕がパッと離れた。というかやっぱり爆豪くんか!



「いきなり何すんの爆豪くん!!めっちゃ痛い!」
「あ゛?廊下でギャーギャー騒いでんじゃねぇよ」
「さっきまで静かだったわ!」
「いや、静かではないよな」
「なぁ」
「というか瀬呂くん?!爆豪くんいないって言ってたよね?!」
「あ゛あ゛!?俺がいてなんか文句あんのか!?」
「嘘じゃないですって。まだいないっていうだけで」
「瀬呂くんてめぇ!!」