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「にらめっこじゃないんだから」
「うっ」



寮の共同スペースのソファに座って携帯を睨んでいると、同じクラスの友人が呆れながら言った。携帯から目を離して友人の方を見ると眉間をぐりぐりと押された。そんなに険しい顔してたかな。

あの事件以来爆豪くんには会っていない。救出されたことはもちろん知ってる。メールをした。電話もかけた。それに対して爆豪くんの反応はほぼ無視である。正確に言えば、元気か聞いたメールに、ああの一文のみのメールが返ってきた。いや、元気なのは切島くんから聞いて知ってるけどさ。でももうちょい言葉があってもいいんじゃないって思うんだよね。



「愛だねぇー」
「は?」
「爆豪勝己からの連絡待ってんでしょ?」
「いやただ心配だからで」
「とか言っちゃってー」



うりうりと頭を小突いてくる友人にムッとしつつ、何も言わないことに感謝した。
あの事件を受けて雄英高校では全学科で全寮制が導入された。ここ数日は入寮でバタバタしていてやっと落ち着いたところだった。いきなり全寮制になって不満な生徒も多いと聞くけどうちのクラスは割とノリノリで楽しんでる。爆豪くんの知人としては有難い思いでいっぱいだ。



「もう寮抜け出して会いに行けばいいじゃん」
「なんで!というか間違いなく迷子だよ」
「ついていこうか?」
「結構です」
「おもしろくないなぁ」



おもしろがるなよ、という気持ちを込めて友人を見るとすいっと視線をそらされた。
あれだけ心配したのに、ああの一言ってひどいじゃないか。なんか悔しいじゃないか。こんにゃろう、という気持ちを込めて爆豪くんとのトーク画面を睨んだ。瞬間、ブルブルと携帯が震え始め、画面には爆豪勝己の文字が現れた。



「ぎゃっ!」
「え?」
「あ」
「どうしたの?」
「吃驚して切っちゃった」
「…あらまぁ」