「佐々木、何してんだ?」
「んー?ちょっとお腹空いちゃったから」
時計は23時を指している。普段ならこんな時間に飲食なんてしないんだけど、今日は何故だかお腹が空いて仕方がない。それはもう寝れないほどに。そんなこんなで23時だけど寮の共同キッチンで料理を始めたというわけだ。
「この時間に食べるのって背徳感だよね」
「そうか?」
「うん、禁断の果実」
「果実?普通に雑炊じゃねぇか?」
「例えだよ。いっそ禁断の雑炊でもいい」
鍋の中ではお米がぐつぐつとしている。せめてもの思いで消化に良さそうな雑炊にした。割って混ぜておいた卵を仕上げに鍋の中へ回し入れてると、ふるふると卵が固まる。うん、ちゃっと作った割にいい感じにできたなー。
「うまそうだな」
「食べる?口に合うか分からないけど」
「いいのか?」
「いいよ」
「じゃあ一口」
轟くんは口を開けてその口を指差す。うん?食べさせろってこと?その状態で待っている轟くんは親鳥から餌を待つ雛鳥みたいだ。少し可愛い。しょうがないなぁ、とちょっと悪態をつきながらスプーンで鍋から雑炊をすくってふぅふぅと冷ましてから轟くんの口に入れた。
「どう?」
「うめぇ」
「それは良かった!」
家族以外の他の人に料理を作ることなんて滅多にないから轟くんの言葉にホッとした。良かった良かった。そう思っていると、轟くんはまた私に向かってもう一口とばかりに口を開ける。
「もう一口」
「嬉しいこと言ってくれるねー!私の分と一緒にお皿に盛ろうか?」
「いや、これがいい」
「ん?」
「佐々木に食わせてもらうのがうまい」
思わずカターンとスプーンを落とした。と、轟くん何言ってるんだ全く!顔が熱くなるのを感じながら気を取り直す。
「もう馬鹿なこと言わないの!早くお皿取って!」
「本気なんだけどな」
「ぼーっとしてないで早く!」
「分かった」