「あの」
「なんだ?」
「いや、ちょっと私どうしていいかわからないんだけど」
「奇遇だな、俺もだ」
「おい」
放課後、呼び出されて断る訳にもいかず、そういえばどこに来いとかも言われなかったことを思い出してとりあえず教室に残って今日出された宿題をしていれば、轟くんが私の机の前の席に座った。いつのまにかクラスメイトたちはみんな帰っていて、教室には私と轟くんしかいなかった。
「とりあえず帰るか」
「え?」
「?どうかしたか?」
「あ、いや、なんでもない」
昼間聞いたことって私の勘違いだったのか?告白するって言われたような気がしてたんだけど普通に帰るの?
肩透かしを食らって体の力が抜けた。とりあえず机の上に出していた、実はあまり進んでいなかった宿題たちを鞄にしまい、お待たせと言って立ち上がった。私が立ったのを確認した轟くんは行くぞと言って私を誘導するみたいに扉の方へ歩く。白昼夢でも見ていたんだろうか。
「佐々木」
「なに?」
「どっか寄りたいところとかねぇか?」
「うーん、特にないかな。なんで?」
轟くんは口元に手を当ててちょっと口をつぐんだと思うと、今度は私の方を真っ直ぐに見て、口元に当てていた手を私の方へと伸ばした。
「お前の可愛い顔がみてぇんだ」
「ぶふっ!」
あまりの不自然さに思わず吹き出した。普段轟くんから聞いたこともないようなセリフと、セリフに全くそぐわない表情。お昼から変だけど、昼食に変な物でも食べたんじゃないかな。轟くんを見ると不思議そうな顔をしている。
「なんか変だったか?」
「変っていうか、どうしたの轟くん」
「女子はこういうのが好きだって聞いたんだが」
「いやまぁ好きだけど」
不自然さの方が完全勝利だ。轟くんって意外性あって面白いな。轟くんは少し納得いかないというような顔をしてたけど、私と目が合うとふっと笑ってまぁいいかと呟いた。
「え?何が?」
「帰るか」
「?うん」