06 みだりにわが名をさえずるなかれ



「……エネル、何なのこいつら」

 神の社に置いて、俺と対等とされるエネルだけれど、実際その通りの対応を皆がしているかと言えばそうではない。
 エネルには知識もあれば教養もあり、ついでに筋肉もある。俺も同じだけの能力を持ってはいると自負しているけれど、その使い方の差なのだろう、どうにも俺は、エネルには勝てなかった。

 今日も稽古と名の付いたお遊びを俺とエネルが行おうとしたときである。彼の後ろから「ほっほーぅ」「ほっほーぅ」と特徴的な笑い方をする珍妙な神官が三人やってきたのである。しかも全員同じ顔。
 彼らはエネルの遊び相手でもあったらしいけれど、ほとんど神官と関わらない俺は彼らを知らない。

 ついでに彼らも交えることになったエネルによる俺の戦闘稽古は酷いものだった。彼らも心鋼が使えるし、連携されると手ごわかった。俺とエネルの連携には及ばないけれどね!どっかで見た気がするし、原作キャラなのかもしくはそこそこ高位の神官なのか。
 俺達はしばらく遊んだ後、彼らが取り出したダイアルの使用を解禁させた。これらは当たればひとたまりも無いけれど、俺達はロギアであるので物理攻撃は問題ない。多少衝撃貝で俺の腹が空気となって吹き飛んだが、空気はどこにでもある。すぐに俺の身体は戻った。

 で。何故、現在俺がこうして顔を顰めているかと言うと。

「……死ぬほど品が無い。不敬」

 三つ子の一人が使った、匂貝だ。臭い。普通に不快なそれが辺りに広がっており、俺は出来るだけ口を開かない様言葉を紡ぐ。エネルは避けた先で一人笑っていたが、俺が本当に引いていると分かるとすぐにその笑みを消した。
 俺は確かにエネルよりも軽んじられているけれど、こんな仕打ちを受けたのは流石に初めてだった。

「もしかして俺に喧嘩売ってる……?」

 辺りに漂う匂いを瞬時に消し飛ばす。三つ子の一人がガタガタと身体を震わせたけれど、俺はそいつをジッと見つめて言葉を待った。
 わざとかわざとじゃないかで罪がちげぇぞオラァ。想像の中のチンピラがモヒカンとアロハを着て管を巻く。其れに倣って、俺も出来るだけ怖い顔をしようと眉間に力を込めた。

「い、いえ、その、」
「なんだゲイア、珍しい。そんなにも不愉快だったのなら、この場で処罰するか? この間新しい技が出来たと言っていただろう、私もそれが見たい」
「……エネル。それ、本当に誰?何?」
「新しい神官だ」

 くしくも置いてけぼりにされた三つ子たちは、エネルに庇われたと思い花を飛ばしては処罰の言葉に顔を青ざめさせた。三人ともそうして同じようにしていると、誰が誰だかわかりゃしない。

「はぁ……実験台にはしない。真空だよ?死ぬじゃないか」
「罰とはそういうものだ」
「俺はこの匂貝が不快だっただけ。そこまではしない」

 軽く手を振って見せれば、突風が吹き荒れ神官たちの丸い身体を吹き飛ばす。けれど彼らも大したもので、受け身を取ったかと思えば少し離れた場所に座り頭を垂れた。
 嫌本当に臭かった。でも殺すなんてそんな。危険思考すぎるエネルが愉快そうに笑った。

「ヤハハ、にしては随分と怒りがあったようだが?」
「俺は空気人間だろう。匂いが混ざると直接身体に取り込まれる感覚があるんだよ」
「……。……それは具体的にどうなる?」
「どうなりもしないけど、エネルだってお兄ちゃんから常にあの三つ子の匂いがするようになったら不快だろ?」

 エネルは少し口を噤んだ後、ピッと人差し指を立てそれを三つ子に向けた。軽い動作で放たれた電撃が避ける間もなく彼らの平伏する雲一歩手前に穴をあける。

「なるほど。理解した。それは不快だ。ゲイアに不純物が混ざるなど看過出来るものではない。おい、次からゲイアに近づくものに決して匂貝を持たせるな。いいな」
「「「ハッ」」」

 三人は仲良くぽよんぽよんと去っていった。
 なんだったんだ、あれは。そして本当に誰なんだアレは。

 三つ子はしばらくしてエネル付きの神官になったが、エネルが許さなかったので俺に近寄ることはほとんどなかった。
 



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