▼2026/01/04:罰が実る、落下するは青年の真上
一度気付いてしまったら、その前には戻れない。気付いていない状態、体験し記憶する前に戻りたくなることがあると聞くけれど、私が戻りたいとしたらいつだろう。過去を振り返っても変える事は出来ないから、あまり考える機会がない。ただ、ふとした時に答え合わせみたいな瞬間が訪れて、あの時のそれはこの結果に繋がる為のものだったと後付けの意味を考える。私は、生きている事自体にはあまり意味を感じない。意味の在る生があるなら、死にも意味が生まれてしまうんじゃないかと考えてしまうから。意味の在る生と死があるなら、意味の無い生もあって、意味の無い死もある事になってしまうと思う。産まれた事に意味がない事なんてしょっちゅうだろうし、死に意味が生まれてしまう事があるのが嫌だ。誰かの死に意味があるなんて、それがどんな形で訪れたとしても悲し過ぎる。無意味な死を迎える事になってしまった人の生の意味が分からなくなるから。
此処まで生きてきて、意味なんて無かったけど『悪くない人生』と思えている今だから余計に。死んだら、殊に自らを殺めるとすべての意味が無くなるという人が居るけれど、じゃあ意味が無かったら死んだ方が良いのかって問いたい。意味なんて無くていい。ただ、『理由』はあった方が良いかもなと思う。この為に生きている、これの為に生きてきたと思える経験を、なるべく多く重ねたい。重ねて、生きる理由の材料にしたい。それがなくなったら死ぬのかって訊かれたら違うんだけど。それでも、この先へ進むモチベーションにはなるじゃない。
何度か投げ出そうとした命がそれでも続いている事に『生かされている感覚』を抱く事は正直、たまにある。でもじゃあそれが『意味』なのかって訊かれても違うんだ。本当に死にたかったんじゃなくて、ただ助けてほしくて、助けてくれる人達が比較的に多かった結果の人生だ。差し伸べられた手に気付けなかった事もきっとあったし、正しく受け取れたこともあったんだと思う。
救われるには、救われる側の準備も要るらしい。私の準備が整っていたのかは分からないんだけど、そんな事は関係ないとばかりに救おうとしてくれた人達の手で、投げ出された私は掬い上げられた。それには意味があるかもしれない。じゃあこの人生には意味があるのかなって、少しだけ期待したくなるけどあまり期待し過ぎると裏切られた時が怖いな。
何にも期待しない人生は面白くないと思う。期待通りに進む人生は面白いかもしれない。でも、予想していなかった、期待もしていなかった出来事や展開にわくわくするのはもっと面白い。それが未来への可能性で、私の生きる理由かもしれない。終止符を打つその時まで未来が分からない事が面白いと感じられるようになれたのは、僥倖だと思う。
未来に期待できないなら、期待できないなりに楽しめる。何が起こるか分からないのは怖いかもしれないけど、悪い事ばかり連続して起きる可能性ってそんなに多くないと信じたいんだよね。で、救う側にとって救う為の準備が整っていれば、ひょいっと助けてくれる存在が現れるかもしれない。その可能性すらも投げ出そうとしていた事にやっと気づいた頃、私はもう大人になっていた。
自分の中に残っている傷の瘡蓋は、多分剥がれ切っていない。新しい皮膚はまだ弱くて怖くて触れられない。けど、皆傷を抱えたまま歩き続けてるんだよね。大なり小なり傷つけられて、傷つけ合って生きている。それは同時に癒し合っている事でもあるし、救い合っている事でもある。誰かの味方をすると他の誰かの敵になる。自分以外の人生の主人公にとっては悪役になる事だってある。守るためには傷つける事だってきっと多いんだ。誰も傷付けずに生きる事は難しい。そうなると誰の事も大切に出来ないと私は思うんだ。自分を含めてね。
人間の腕ってさ、大体の人は2本しかないんだよ。これで抱えられるものしか守れないのは悲しいけど、それでも抱えて守り続けたいものがあればそれを貴方の『生きる理由』にしていいんじゃないかな。
私にとってのそれは『作って生み出す事』だった。書く、描く、謡う、折る、切る、縫う、接着する。何かを生み出す自分が一番好きなんだって気付いた。そして、自分には生み出せない何かを生み出す誰かが居なくなるのは嫌だから、なるべく多くの人に幸せでいて欲しい。
生きる事に絶望している人を見て、それでも生きてほしいと声をかける事を躊躇う事はよくある。それがその人を追い詰める事は知っているから。無責任な『生きて』ほど嫌なものはない。それを知って理解したうえで、其処を乗り越えてでも『生きていてほしいんだ』って言ってくれた人の存在も、生きる理由にさせてもらってる。
この痛みを知っている貴方が言ってくれた言葉だから、私は救われる準備が出来たんだ。
こんな事を思う時、あの頃の辛さにも意味を見出せるかもしれないと考える。だって、そうでなくちゃ救われないじゃない。傷を抱えたままでも生きていけるって、あの頃は知らなかったんだからさ。