単純明快

ちょっと包丁で指を切った。結構、ザックリいった。多分、怪我をした部分が良かったのだろう、そこまで痛くはなかったのだけど、思ったより血が出て自分でも驚いた。

絆創膏はどこにしまっていたんだっけ。大して痛くもないのに量だけは流れる血液を眺めながら、絆創膏のある場所を思い出そうとすればふと後ろから大きな音がした。
何かと思って振り返った私の顔より、強く手首を掴まれるのが先であった。
「なに、してるの」
単語を区切りながら外から帰ってきたであろう幸村が低い声で言う。今日はかなり冷え込むと朝の天気予報でやっていたせいか、手が冷たかった。
「えっと…ちょっと包丁で切っちゃって…」
他にどう説明したらいいのか分からず、何か悪いことでもしたみたいにしどろもどろになって答えると、幸村は更に眉間の皺を深くする。
「切って?それでなにをしようとしてたの?」
「絆創膏を…」
「貼ってないじゃん」
「どこにしまったのか忘れて…」
そう言えば少し黙ってから手を離した幸村は戸棚の中を漁って四角い箱を取り出した。そういえば、そんなところにしまった気がする。
ありがとね、と言って絆創膏を受け取ろうとしたけれど、伸ばした手をひょいっと躱されて私の手は宙を切った。代わりに絆創膏の封を開けて幸村が私の手を取る。
「自分でも貼れるよ」
むしろいつもなら自分で貼らせてくるのに、今日は自分が貼りたい気分らしい。それにしたってたかだか指の傷一つに貼るのに幸村の目は真剣で、まるで壊れ物を扱うように慎重だ。
「……絆創膏、今度から机の上に置いておくから」
「え?あ、うん」
「あと、また今日みたいに切ったら俺に言って」
「そんな大袈裟な…」
こんなものは舐めて治る、とまでは言わないけれどかすり傷程度だ。そう呟けば幸村はあからさまに不機嫌そうな顔をした。
「大袈裟な、なに?」
これは怒っている。それは分かったのだけど、どうして怒らせたのか分からずに続ける言葉を失っていると、呆れた声で幸村がため息をついた。
「あのさあ…」
丁寧に絆創膏が貼られた私の指を幸村がなぞる。それはまるで私の形を確かめる作業のようだ。何かを言いかけては口を噤んで、言いたい言葉を全部まとめるみたいに幸村は口の中で言葉を転がしていた。
「俺、お前のこと好きなんだもん」
そうして半分拗ねたような声で、だから心配させないで、と呟くのが聞こえたものだから、なるほど彼は本当に私のことが好きなのだ、と不謹慎にも納得してしまったのだ。