結婚について

大切なものを何一つ取りこぼさないで大事に抱えられなければ、それは愛と呼んではいけないのだろうか。生憎、俺はそんなに器用じゃない。

恵まれたことに大切なものが沢山ありすぎる。まるで子供にクリスマスプレゼントを贈るように、みんな俺に宝石のような宝物を次から次へと分け与えてくれた。
俺は我儘だからその一つだって手放したくはなくて、馬鹿みたいに手を広げていれば俺の両手はあっという間にいっぱいになってしまう。だから中には一度地面に落っことして傷つけてしまったものもあるし、長い間埋もれていて汚してしまったものもある。でもそこには愛がないのかと言われれば、それは断じて違う。
多分、綺麗で響きの良いなものだけが愛ではないのだ。

ずっと一人で回っていた長いツアーを終えて久しぶりに家へ帰った時、ふと、ドアを開ければ君が待っていてくれるのだと思いだして、どうしようもなく幸せだと気が付いた。幸せだと気が付いたし、君がくれた幸せを絶対に手放したくないと思った。
それって俺の悪い癖なんだろうか。君のことを手放したくないと思ったけれど、君の方はどうだろう。ずっと一人のまま、こんなに広い家で俺を待つのは苦しくないだろうか。
「俺と一緒になれば君はきっと傷つくけど」
俺だってできることなら君にはずっと笑っていてほしい。けれどそれができないとしても、俺は君を手放したくないと思ってしまう。

きっと、大切なものを自分の腕の中でただ抱えて守ることだけが誠実さではないのだろう。好きな誰かを傷つけるのはまるで同時に自分の心も傷つけているようで、とても痛い。本当に好きならば相手をちゃんと傷つける覚悟だって誠実さであると思うのだ。
「俺はもう、君を傷つける覚悟はできているんだ」
だからどうか、君を逃がしてやる気なんてさらさら無いから、それだけの覚悟で、俺の手を取ってくれないか。