やろうとしていたこと、行くはずだった花火大会、会いたかった人、携帯に書いたきり見返さなくなったメモ、いつかの話の賞味期限が過ぎて秋。引き際を見失った暑さがまだ夏のフリをするけれど、君が誰にも言わず内緒で付けた甘くて苦い香水の香りには勝てっこない。どれだけ嗅いでも金木犀の香りに飽きることがないのと同じように、見慣れた君の顔を僕はさも初めて見たかのようにカメラに収める。何をしたって僕たちは一人きりだと念を押してきそうな冷たさがこれから来るけれど、うん、お腹が空いたからとりあえず今は美味しいものを食べに行こうか。