翌朝、ユーフェミアはいつもと変わらない様子で授業に向かった。呪文学の授業に行ったはずだから、きっと杖を見つけられたのだろう。ユーフェミアがあまりに普段と同じで、きっと今までもああいう目に遭った日がもっとたくさんあったと気付く。
シンシアもエリザベスもまだ完全にユーフェミアを見守る(気分は見捨てているよう)ことを飲み込めてはいない。複雑な心境を抱えながら、何もできない自分が歯痒くて腹立たしかった。
「どうして今日に限って薬草学なのかしら。2コマもハームズワースと同じ空間にいるなんて耐えられる自信がないわ」
「私もよ。私がハームズワースに呪いを撃ちそうになったら止めてくれない?」
「出来たらね。私が引っ叩きに行きそうになったら止めてね」
「出来たらね」
そんな軽口を叩きながら、温室に入る。できるだけハームズワースを視界に入れないようにしたが、彼女のキャンキャン甲高く耳につく声は勝手に拾ってしまって、好きな薬草学の授業なのにちっとも楽しくなかった。
フレデリカにも今日は二人とも機嫌が悪い?なんて聞かれてしまって、ちょっと失敗だ。にっこり笑って、そんなことないよ、と返したが不自然ではなかっただろうか。レディ・レッスンのおかげで、笑顔を作ることは慣れてきたはずだが、まだまだのようだ。
そうこうしているうちに12月になった。12月になるとホグワーツは、大広間や玄関ホールがツリーやリースなどで彩られ、大広間の天井も雪が降るようになり、とても美しい。
クリスマス休暇が近付いたところで、ユーフェミアはエスメラルダからクリスマスを一人で過ごすことなどをいじられていたけれど、エスメラルダや非道な正妻が支配する家になんか帰りたくないに決まっているので、綺麗にスルーしているようだった。何かあればエヴァンジェリンやアデレードを呼ぼうと思っていたのだが、そうせざるを得ない状況にはならなかった。ここ最近、宿題を早く終わらせたかったシンシアとエリザベスが張り付いていたのもあるだろうが。おかげでクリスマス休暇に入る前に大半の宿題を終わらせることができたので、ある意味感謝はしている。
「ユーフェミアのおかげでほとんどの宿題を終わらせることができたの。おかげでクリスマス休暇を他の勉強に充てられそう。本当にありがとう」
「シンシアが頑張ったからよ。私はアドバイスしかしてないもの」
「良いクリスマスを」
「ええ、シンシアも良いクリスマスを」
ユーフェミアとハグをしてから、馬の居ない馬車に乗り込んでホグズミード駅を目指す。ホグズミードと言えば、3年生以上が週末に出かけられるホグワーツにほど近い魔法使いの村だ。三本の箒やマダム・パディフットの店と行った飲食店、ゾンコの悪戯専門店、ハニーデュークスなど、たくさんのお店がある。
エヴァンジェリンやアデレード、それからあの双子のウィーズリーによる大事件の後はモンタギューやワリントンが、ジャニーデュークスのお菓子をお土産に買ってきてくれていた。おかげでクリスマス休暇までシンシアたちお茶会大好き魔女たちのお菓子ストックがゼロになったことはない。シンシアが3年生になったら、絶対に居残りの1、2年生にお土産を買ってくるのだ、と思った。
深紅のホグワーツ特急を見ていると、入学からまだ4ヶ月目ということに驚いた。もっと長いこと過ごしていると錯覚するくらい、スリザリンでの寮生活に馴染んで濃密な時間だったのだろう。
「良ければ年末くらいに、我が家へ遊びに来ない?シンシアもいるし、4人で集まりましょう」
「ふふ、シンシアにも息抜きが必要だものね」
「もしくは私たちとのお茶会で実践かもよ?」
「もう、からかわないでちょうだい」
エリザベスの提案に他二人が悪ノリしてくる。でも、休みの日にも彼女たちに会えるのはとても嬉しかった。この約4ヶ月間で、すっかり一緒にいるのが当たり前になってしまったようだ。
ホグワーツ特急の中でも、4人のおしゃべりは尽きなかった。昼下がりにロンドンのキングズクロス駅に着くと、シンシアは緊張してきた。この後両親と合流した後、エリザベスのご両親に挨拶するのだ。いくら歓迎してくれているとはいえ、最初の挨拶は肝心だ。エリザベスやレディ・レッスンに協力してくれたルームメイトたちのためにも、努力の痕を残したい。