※後半配信前のため後編捏造
「おっと、カミッチュダメだべ」
「ひょわっ?!」
「あーあ、わやじゃ……。ごめんな」
「あー、仕方ない仕方ない、ポケモンのしたことだからね。気にしんさんな」
ブルベ学園に来てから2週間が経った。初日から早速多方面へ圧倒的強さを見せた私にスグリはもう戻れないほどに闇落ち、とはならず、こんだけ強くなったおれでも敵わんなんて、やっぱりナマエはわや強いな!と昔のようににへへと笑って無事わだかまり解消しましたとさ、めでたしめでたし。
もちろんまだ交換留学は終わってないので、和解したスグリと青春を謳歌している。お互いの部屋でゲームしたり菓子パしたり、学園やイッシュを案内してもらったりと充実した日々。これだよ、こういうのを楽しみにしてたのよ私は。できればキタカミの時もこうでありたかった。
まあ、スグリも強くなって精神的にも大人になったってことだよね。拗らせてた思春期が軌道修正されて良かった。あのまま失踪とかされたら私は、私は……。写真を見て思い出を振り返ったり、パシオで出会ったシロナさんに動揺したりしなきゃならないところだった。それは別世界線のォロォロ。
そんなこんなでいつも通りスグリの部屋でゆっくりしていたところ、彼の手持ちであるカミッチュのみずあめボムをくらいあめまみれになったのである。何で。
別にあめまみれになったのはいいのよ、いや、よくはないけどまあポケモンのやったことだしわざとじゃないし。あとここスグリの部屋だし。いやほんと、私の部屋じゃなくてよかった。借りてる部屋汚して退出時クリーニング代請求されたらたまったもんじゃない。スグリはブルベ学園のチャンピオンだから少々部屋が汚れてもクリーニング代出るでしょ?知らんけど。
で、そもそも私があめまみれになったのは何でや。私、スグリの部屋でナンジャモの最新動画見てただけなのに背後からべしゃっとあめまみれよ。それは自分の部屋で見ろよ。
「あめまみれなのはいいんだけどさ、どうしてこうなったの」
「暇だからカミッチュのマッサージでもすっかと思ってマッサージしてたら刺激しちまったみたいで」
「何、みずあめボムのツボとかあるの?そこ押しちゃったの?」
「ん、みたいだな。すまね」
「まあいいけどさ。ちょっとこれどうにかしたいな」
みずあめボムのツボとかあるんだ、うかつに触らんどこ、と一つ賢くなったところで私はこの状況をどうにかしたい。飴って結構粘度が高いうえ重くて動きにくい。し、ベタベタするからかぶれる前にはやく洗い流したいな。きっと濡れタオルで拭くだけじゃベタベタは取れないし服も着替えたいから、スグリの部屋のお風呂借りれないかな。チャンピオンの部屋はシャワールーム付いてんの羨ましいわ。私もパルデアのチャンピオンなのでつけてくれ。交換留学生なのに図々しい。
「そのままじゃおれんから、ここでシャワー浴びてく?背中流すべ。あと着替えならオレの服貸すよ」
「その言葉を待ってたよ、ありがたく使わせてもらうね」
後片付けは私がお風呂に入ってる間にスグリがするだろうし、そもそも私がここにいちゃ片付けにもとりかかれないと思うので早速シャワールームを借りようと起き上がる。
はずだったが、うまく立ち上がれない。なるほど、これだけ重くてねっちょりしてたらそりゃ素早さ下がるわ。
「スグリ、」
「ん、おれの手つかんで」
「わ、ありがと。よっ、と」
スグリが伸ばしてくれた手を掴み、起こしてもらう。スグリの察知能力高すぎ。ツーカーの仲だね私たち。
普段あまり気にしたことはないが、あめまみれの私を軽く起こしてくれるなんて、スグリ意外と力あるんだな。そりゃそうか、男の子だもんね。仲良すぎてすっかり忘れてたわ。あとゼイユちゃんがあらゆる意味で強すぎて相対的にスグリの強さ霞んでた。ゼイユちゃんの前では人は皆等しく無力になるから仕方ないけれど。
「じゃあちょっとお風呂借りるね」
「あ、まって。サクラ」
「ん?」
お風呂へ向かおうとしていた私を静止させたスグリに、なんだと顔を向ける。
するとスグリは私に顔を近づけ、
ペロッ
「ん、やっぱ甘いな」
「は?……は?」
あろうことか頬を、舐め、た。舐めた?え、舐めたの?私の頬を?
やっぱ甘いな、ってそりゃあカミッチュの飴ついてますからね。甘くもなるだろう。え、それが気になったから舐めたの?年頃のかわいい女子の頬を?事案だよ事案、チャンピオンともあろう方が問題行動とはこれいかに。
……いやまてよ、もしかしてスグリ、友達いなすぎて友達との距離感掴めてない可能性もある?ワンパチがパートナーの頬をなめるように、おれたちは仲良しだよって愛情表現をしてくれたわけ?それともただ単に本当に純粋に飴の味が気になっただけ?それなら指ですくって舐めなよ。いや、それもどうなんだ。
友達のいないスグリの自尊心を傷つけぬよう、遠回しに友達間ではこんなことはしないことを教えてやらねば。自尊心を傷つけるとライコウになるかもしれんからな。いつか森で相まみえて、その声は我が友スグリではないかって展開も胸熱だけども。何割かの確率でダークサイドに落ちるかもしれんから言葉選びは慎重にな。また、わああああ!って四つん這いになって叫ばれたら私のほうがトラウマになるから。キタカミの傷は思ったよりも深い。
「スグリ、飴の味が気になるのはわかるんだけど、ほっぺペロリされたらお友達びっくりしちゃうよ」
下手くそか。何歳の子どもに教える言い方よ。いや、けど友達経験値1とかのスグリにはこれくらいのほうが伝わりやすいのでは。失礼極まりないな私。
「けど、サクラは友達じゃねから大丈夫だべ」
「ひゅっ」
いやいやいや、そんなことある?びっくりしすぎて勢いよく息吸っちゃったわ。もしかしてだけど、キタカミでの件まだスグリの中で消化されていないのでは。まさか友達経験値1は私の方だった?
いやいや、私にはネモもペパーもボタンもいるし?みんな友達だし?え、友達だよね?私だけそう思ってるとかそんなことないよね?同じ釜の飯ならぬ同じサンドイッチを切り分けた中だもんな、親友だよ。いや、それ言ったらスグリもそうなんだけど。釜の飯どころかヒウンアイスも半分こしたんだけど。疑心暗鬼になってきた。一つ確かにわかるのはゼイユちゃんと私の関係は親分と舎弟ってこと。これはゆるがない。姉貴いつまでもついていきます。
「あー、あのさ、言いにくいんだけど、私たち友達だと思ってたんだけどな」
「は?」
「ひえっ、そんな驚く?というか、こんなに学園生活一緒にエンジョイしてて友達じゃないことある?私間違ってる?!」
「いやいや、おれらカップルだべ」
「……ん?」
友達ムーブしてきたお前が悪いんだからなと言わんばかりに逆ギレかました私に、言葉のギガインパクトをぶっ放してきたスグリ。カップルって、スグリ、あんた冗談も言えるようになったの。あらまあ成長したわね。
そんな軽口も言えないほど真剣な目で私を見つめるスグリ。
「か、カップルって、え、いつから」
「サクラがこっちきてすぐさ。おれと勝負さしたあと、おれ、そんな強いサクラがずっと好きだったって伝えたべ。そしたらサクラもありがとう私も好きだからねって」
「え、ああ、それ……それ、かあ」
私も好きだからね、強い自分が、そして勝負が。って意味だったんだけど。さすがに言葉でそこまで言うと棘が立つと思って言わなかった私の大人な判断が間違いだったってコトネ。仲直りのチャンスにそんな水刺すようなこと言えるかよと思って言わなかったのに。言ったら多分刺されてたけどな。
「とにかく、おれは言質とってっから。それに、ブルベ学園公認だしな」
「えっ?」
「みんなおれらが付き合ってっから遠慮して遊びに誘ってこねぇんだべ」
「聞いてない」
確かに全然声かけられないとは思ってたのよ。まあでも、それも圧倒的強さを誇る私に近づき難いんだな、その気持ちもわからないでもないよと思ってあまり深くは考えてなかったけど、そういうことだったのか。チャンピオンって孤独ね、とか浸ってた瞬間が恥ずかしいよ。みんな言ってよ。
「それに、普通は異性の部屋に2人きりで過ごさんべ」
「それはまあ、確かにそう」
「つまり、サクラだって嫌じゃないってことだべ。だからこれからも仲良し公認カップルでいような」
「いや、まあ嫌ではないけど、ちょっと考える時間を」
「ほら、嫌じゃないんだな!おれわや嬉しい!」
がっちりと肩を掴まれにへへと笑うスグリ。無邪気な笑みに対して肩を掴む力は強い。逃げられない。パルデア最強チャンピオンの私といえど、リアルファイトじゃ敵わないのね。私は無力。こんな時私がゼイユちゃんだったら手ェ出るよで一蹴できるのに。姉は強し。
「さ、それじゃお風呂入るべ」
「え、まって、なんで一緒に入ってこようとしてるの」
「ん?おれ背中流すって言ったべ。隅々まで綺麗にすっから任せてな」
「え、あれは背後に浴びたからって意味じゃ、ま、自分でできるから!」
「遠慮はいらないって。はい、服さ脱いでな」
「ちょ、スカート脱がすな、ま、ひいいい!!」
服はどんどんスグリに脱がされるのでせめて下着だけはとしゃがみ込んでみたが、ひょいっと持ち上げられそのままお風呂へ連れていかれる。上下セットの下着、しかもわりとかわいいやつだったのは不幸中の幸いだな。
スグリは私をおろしてから、脱衣場の棚からバスタオルを一つ手に取り渡してくれた。
「オレも服脱ぐから、その間に下着とってバスタオルさ巻いてな」
「あ、ありがと」
そう言うと後ろを向き、自身も服を脱ぎ始めるスグリ。服を着ているとわからなかったけど、スグリ、意外と筋肉あるんだな。当たり前だけど、肩幅も私よりあるし、腕もがっちりしていて改めて男だと感じる。
ついまじまじと見てしまったが、こう意識し始めると緊張してしまう。
それに冷静に考えてバスタオルよこしたくらいでありがとうじゃないから、私。一人で入らせてくれて初めてありがとうだから。
そうは思いつつもこれ以上やーやー言うとバスタオルすら纏わせてもらえない可能性もあるので、スグリが後ろを向いているうちに急いでバスタオルを巻いて下着をとる。
下着を脱衣場へ置こうとした時に腰にタオルを巻き終えたスグリと目があった。
「んだば流すべ」
「え、ああ、うん」
スグリはお風呂の扉を閉め、私の手をひいてシャワーの前に立つ。彼が蛇口をひねるとジャーと勢いの良い水音が響く。お湯になるのを待ってからバスチェアを軽く流し、私に座るよう促すのでありがたく座らせてもらった。
目の前にある鏡の中で、私の後ろから膝立ちでシャワーをかけてくれるスグリと目が合う。にへへと笑うその顔に肩の力が緩んだ。
そうだよね、洗うだけだよね。それにタオルも巻いているし何も恐れることはない。先程少々強引にカップルになったとはいえ、私とスグリの仲である。そんなエロ同人のようなことは起きない。というか私が起こさせないよ。
ひとまずはスグリに任せようと、鏡越しに彼がボディーソープを手に取り軽く泡立てているのを見ながら、洗われるのを素直に待つ。
泡の乗った手が私の肩を優しく撫ぜる。
「ひゃ!まって、ちょっとくすぐったい」
「わ、ごめんな。サクラの肌傷つけねように優しく洗おうと思ったんだけど、ちょっと弱すぎたな」
先ほどより少しだけ強くなったが、それでも壊れ物を扱うようにやわらかに洗ってくれる。その心遣いもくすぐったい!照れちゃう!私以上に私のこと大切に扱ってくれるじゃん。普段ボディタオルでゴシゴシ洗ってる自分が恥ずかしくなってきたよ。ごめんな私の肌。
スグリの優しさにムズムズしながらも大人しく肩や腕を洗ってもらう。しかしその手が胸の上の方からバスタオルの中へ入ってこようとした時には流石に止めた。ナチュラルに何してるんだよ。
「待ってスグリ!それはまだはやいから!!」
「けどタオルの上からじゃ洗えねぇべ」
「自分で洗うよ!」
「えー……そんな心配しなくても、サクラのこと大切にしたいからここではしないし、初めてはベッドの上で優しくするって決めてっから」
「なっ!ちがっ、そういう心配じゃなくて!も、一人で洗わせてくれ!!」
思いもよらない言葉で顔に熱が集まる。勘弁してくれ!恥ずかしさ極まれり。キャパオーバーのため、スグリをぐいぐいと押し、風呂場から出てもらった。
「こういうのは心の準備いるんだから!今日はだめ!私自分で洗うからあっちで待ってて!」
ガチャン!とお風呂の扉を閉めてへなへなと座り込む。まだ私たち付き合って数分なんだけど。一緒にお風呂入るのだって早いのに。そりゃスグリの中ではもう何週間か付き合ってるわけだけども。キ、キスだってまだしてないのに。
あれやこれや考えているとどんどん恥ずかしくなる。顔の火照りはまだまだ落ち着きそうにない。
出たらどんな顔して会えばいいのよ……。
(今日はダメってことは、日を改めたらいいってことなんだな。わやめんこいなあ)
(それにしても計画通りナマエとお風呂入れて嬉しいべ。指示聞いてくれてありがとなカミッチュ)
2023.11.22