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イライラする。ワタクシのほうが先に出会い、長く共に過ごしたはずでは。それに美男子で言うなら負けてない。言い寄ってくる町娘はたくさんいた。あと、何度コイツを助けてきたと思ってるんだ。勿論アルセウスに会うという目的があってのことだが、だとしてもあれだけ優しくしてきたのだ、なびけよ。
セキさんセキさんとコンゴウ団の長に引っ付くこの女を見て考える。

本当に、本当に認めたくないが、ワタクシはこの女に好意を抱いている。久しぶりに村の近くを通ったので、まあ一応、と少しだけ様子を見に来たらアルセウスに会う努力もせず、のらりくらりと生活を送っているのに腹を立てて声をかけたのだが。その時にコンゴウ団の長に恋心を抱いているという話を聞き、苛ついた自分にそういうことかと気づいてしまった。
こんなちんちくりんな小娘に、と認めたくない自分もいるが、そうは言ってもこの女の口から「セキさんセキさん」と他の男の名前が紡がれるだけで腑が煮え繰り返る思いなのだから誤魔化しようがない。
さらには対峙した時の笑顔が自分に向けられるものと違ったことにも苛つき、ワタクシもここにいるのだと嫉妬から反射的に抱きしめてしまったのだから。そういうことなのだ。

しかし、こんなにも盲目的にコンゴウ団の長に心を入れ込んでいるのにどうやって振り向かせればいいのか。この娘との別れ方もあまり良くなかったせいで心象がよくない。
振り向かせる前にこいつらの恋が成就してしまっては困る。となれば恋が実らぬよう邪魔をしてやればいいのだ。

恐らくこの男もサクラのことを好意的に思っているが、まだ幼く見えるこの子に手を出すのを躊躇っているのか、長という立場からそう簡単には頷けないのか、詳しい理由は分からないがまだ最後の一歩を踏み出す感じではない。
となれば徹底的に2人きりになるのを阻止し、積極的にサクラに引っ付きワタクシの存在をアピールする。
ワタクシはサクラさえ頷けばすぐに手篭めにすることができる。まあ、最悪頷かなくてもやりようはいくらでもあるが。それは本当に追い詰められた時に使えばいい。

とにかく今は少しでもワタクシへの好感度を上げなければ。優しくするのは慣れている。あれだけこの娘を甘やかしたんだ。
ただ、一度本心でぶつかったことがある分少しやりにくくはあるが。
まあいい、それはハンデということで。いや、ハンデなんか設けている場合ではないが、仕方ない。

図鑑完成の監視という名目で共に過ごす、その中で必ず落とす。ワタクシは顔がいいので。サクラも好きでしょう整った顔。毎日隣でこの顔を見て、ワタクシの優しさに触れて、落ちろ。

それはそれとして図鑑も完成させてくださいね。おい、サボるな。


(さあ、次の目的地に行きましょうか)
(えー、ちょっと休憩しようよ。セキさんのところでゆっくりしようよ)
(ダメです、絶対に。さ、行きますよ。そうだ、疲れたのならお姫様抱っこをしてあげましょうか?)
(え、いいの?ラッキー、お願い)
(おや、てっきり断るかと思ってました)
(え、何、してくれないの?本気じゃなかったのかよ)
(いえいえまさか、ワタクシにお任せあれ!)
(わーい、ありがとウォロさん(アルセウス絡むとやっぱり案外いいやつ?))


2023.11.19



 

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