22
宿を借りた私達は各自少なくなった荷物を置き、1日の疲れ癒すように寝具に横になる。
突然始まった枕を使ったケンカに皆なんだかんだ言って体力いっぱいあるよなぁと巻き込まれない様に遠巻きに見ているとビビさんが口角を緩ませていてほっと息をつく。
「ビビさん」
「なまえさん……ごめんなさい、折角砂漠を越えたのに結局…」
「それ以上は言わないでください…ビビさんは悪くないです…私こそナノハナの時にもっと情報を集めてたら良かったのにって思ってるので……」
「そうね……過ぎたことは仕方がない」
なんだかんだ2人で話すのはそうそう時間が無くて、会話に詰まる。言わなければ、ビビさんに言わなければならない。
「独りで抱え込まないでください」
「…え、」
「同行の立場で言うのはあれなんですけど……ビビさんには頼もしい仲間がいるじゃないですか」
視線を向けるそこには枕投げ大会と化したその場に、枕を持ち男性陣に拳骨を落とし正座させるナミさんの姿。
「ちょ、ちょっと今は緊張感がないとも言えるけど……!」
「ふふ、そうね」
「……私の知ってる同い年は、友達同士で遊んで、自分の事しか考えてなくて人にいっぱい迷惑をかけて、明日のことなんて二の次でした……。ビビさんももっと迷惑かけていいと思うんです」
「そんなこと……!」
「それで迷惑かけたらいっぱい謝って、いっぱいお礼をしたらいいと思うんです」
きっとビビさんはまだ、みんなに巻き込んでしまったと悔いている。独りで戦おうとしてる。独りで終わらそうとしてる。
でも……
「独りより仲間が居た方が心強くないですか」
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なまえさんは私の瞳を真っ直ぐ見てそう言った。
その瞳に少し心臓を跳ねさせる。
なまえさんの瞳は私の全てを見透かしているようで少し、少し目を合わさるのに心が痛かった。
だって私はこの国の王女で。
パパがどうしているかも分からない今、何かを出来るのは私しかいなくて
私が
わたしが
この国を救わなきゃいけなくて
「なまえさん……私どうしたらいいのかなぁっ…」
全部悪いのはクロコダイルで。
反乱軍も国王軍も国民も誰一人悪くないの。誰一人傷付いて欲しくないの、死んで欲しくないの。
この国にまた雨を降らせて……
みんなに笑って欲しいの
「そんなの簡単ですよ」
「……っ」
「みんなを頼ればいいんです」
もうたくさん頼ってる。ウイスキーピークまで送って貰って、助けてもらって、アラバスタまで着いてきて貰った。
いっぱい迷惑もかけて、もうこれ以上……!
「だったらとことん迷惑かけたらいいじゃないですか、これ以上って言うなら10も
100も変わりませんって」
「でも……」
「だったら私には迷惑かけてください」
私の手を取り額の前に持ってきたなまえさんは口角を上げて笑った。
「ビビさんに私お願いされたんですよ、力を貸してって」
「……!!」
「だから私ここにいるんです。自分の意思でビビさんを助けたいって思ったから」
目を細めて笑うなまえさんに、抑えていた暖かい何かがこみ上げてくる。
あぁ。なまえさんはずるいなぁ。
こんなに、こんなにも私のことを助けてくれるのに
なまえさんには、ふれさせてもくれない。
「ありがとう……!!」
涙を落とさない様に堪えて、この情けない顔を見られないようになまえさんの首に腕を回す。
「……ねえ、私たち仲間がダメなら友達にはなれるかしら」
「えっ、」
「仲間にもなれたら嬉しいけど、友達にはなれるでしょ?」
身を固くしたなまえさんは今どんな顔をしているのだろう。
「ほら、私たち同い年じゃない!」
腕を解き、肩を掴むとなまえさんは困惑していてその顔に少し笑ってしまう。
「よろしくねなまえ! 私のことは堅苦しくビビさんなんて呼ばないでね!」
「えっ、え……そんないきなり…!しかも王女様なのに…!」
「その喋り方もナシ!!」
きっとなまえは押しに弱い。
渋々頷いてくれる彼女にニヤリと笑う。
同い年の友達って初めてだ、初めての友達がなまえで……
「ありがとう、なまえ」
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