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砂嵐が納まったあとユバに足を踏み入れると、オアシスと聞いていたユバはまるでその面影が無いように砂に覆われていた。


「旅の人かね…、砂漠の度は疲れただろう」


声が聞こえ周りを見渡すと、ふらふらとし、薄汚れた男性がユバの地をシャベルで掘っていた。


「すまんな。この町は少々枯れている……。だがゆっくり休んで行くといい、宿ならいくらでもある。それがこの町の自慢だからな」


今の時間帯が夜だからか人の気配はこの男性以外あまり感じない。砂嵐の影響なのだろうか。
さっきの一度の砂嵐でここまで砂に埋まり、人がいなくなることはないはず。


「あの、この町には反乱軍がいると聞いてきたんですが…」


きっとこの国の王女が此処にいたら可笑しいかもしれないという配慮からビビさんは顔を隠しながら、反乱軍の居場所を聞く。


「反乱軍に何の用だね…! 貴様らまさ反乱軍に入りたいなんて輩じゃあるまいな!!?」
「うわっ!?何だ何だいきなりっ!!」


反乱軍という言葉に反応した男性は声を荒らげ、石やバケツ樽を投げ飛ばす。


「あのバカ共ならもうこの町にはいないぞ……!!」
「何だとっ!!?」
「そんなっ……!」

男性が言うには砂嵐はさっきのがやはり初めてではなく、3年前からの出来事だと言う。
そして私たちの目的の反乱軍は砂漠化して物資の供給も難しくなり、寒暖差で反乱もままならないと本拠地を“カトレア”に移したという。

「カトレア……!!?」
「どこだビビ、それ近いのか!?」

そしてそのカトレアはナノハナの隣にあると言う。
私たちは見事にすれ違ってしまったのだ。


「おい……!俺たちァ何のためにここまで……!」

「ビビ……!!?……今、ビビと…!?」

「おいおっさん!ビビは王女じゃねェぞ!?」
「ルフィさん!」
「言うな!」

ウソップさんでルフィさんを叩くフォローでは虚しく、誤魔化す間もなく男性に恐らくビビさんが王女だということがバレた。


「生きてたんだな…!よかった……!私だよ!!分からないか!? ……無理もないな、少し痩せたから……」


ビビさんの肩を掴むその人は“トト”と名乗ると、ビビさんが何かを思い出したように驚愕な顔をし声を潜める様に口元を手で抑えた。

「私はね…ビビちゃん…!!国王様を…信じてるよ……!あの人は決して国を裏切る様な人じゃない……! そうだろう!!?…反乱なんてバカげてる……!あの反乱軍を……頼む!!止めてくれ!!

もう君しかいないんだ……!!」


トトおじさんと呼ばれるその人の声はとても悲痛に響き、どれほどこの国を思っているのか、止めたくても止められない反乱軍にどれほど悩ませてるのかが痛いほど分かる気がした。


「トトおじさん心配しないで」
「ビビちゃん……」
「反乱はきっと止めるから!」

そう言って笑った貼り付けた笑顔に、胸が少し苦しくなる。
親しかった人から直接聞いたこの国の様子に何を考えているのだろうか。王女なんて私には縁のない言葉だし、世界。でも同い年の彼女はとても強くてこの国を思ってて、どうしてこんなに1人で背負おうとするのだろうか。


なんで、なんで


頼ってくれないのだろう。

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