キャサリン
今日もキャシーはここには来なかった。いつもシフト通りに来てきちんと仕事をこなしている偉い子だったのに、ここ数日は連絡も無しに休んでいる。店長もキャシーの誠実っぷりをきちんと知っているから、すかさずクビになんてしないが、連絡も全く取れていないようで、八方塞がり。お客さんもあの可愛らしくもセクシーな雰囲気にメロメロな方が多いから、キャシーを求める声は多い。一体どこにいるのだろうか。
「ちょっとなまえ、来て……!」
「え、きゃしー?」
バイトが終わって、スキップでもしだしそうなくらい嬉しい気分だった私の腕をつかんだのは、顔はとってもキャシーなのに、とってもセクシーな格好をした女の人だった。
「キャシー、なの?」
「さあ、どうかしらね?」
「いやでも、そんなに綺麗な髪色なかなかいないと思うし、服装は確かにいつもと違うけど……」
綺麗な、桃色と言ったらいいのだろうか。形容しがたいけど、とても美しくて、太陽の光にきらきらと反射するその髪はキャシーのシンボルと言っても過言ではないと思う。それくらい、珍しい髪色なのだ。
「……そんなことはいいの。あの子はもうここには来ないわ。男の人の相手をするのにうんざりしたのでやめましたって言っといてくれないかしら」
「それって、キャシーは私に姿を見せる気もないってことですか?」
「そういうことになるんじゃないかしら」
「そんな……キャシーに言いたいことがたくさんあったのに……」
キャシーは私生活をあまり表に出さなかった。いつもショッピングやカフェに誘っても、乗った試しがない。まあ、そういう子なのかなとは思っていたけど、最後までこの喫茶以外では会ったことのない、ただの同期になってしまうのは少しだけもったいない気がするのだ。
「ま、まあ一応、その子との繋がりが私にはあるわけだから? その用件とやらを私に伝えてくれてもいいのよ、別に?」
「そ、それでしたら、いつの日かまた美味しい紅茶とケーキを食べに行こうと伝えてください。会える日まで、すてきなお店見つけておくので」
「ふ〜ん。もうここには来ないっていうのに?」
「それは、わからないじゃないですか、その時になるまでは。私が死ぬまでこの島には訪れないかもしれないし、数年後にまた偶然会えるかも。再開できた時のために、探しておくだけです。ケーキを食べるのも、紅茶も飲むのも大好きですし」
「そう、変わってるわね」
私に視線を投げること無く言い切った彼女は、いつの日かのキャシーによく似ていた。
「それ、キャシーにも言われたことがあります。」
「……もう用件はないでしょ。私は帰るわ」
「ええ、また」