特別に、わたしがあなたに寄り添って、特別に、あなたはわたしに囁いた。愛するってそういうこと?優しいより何より、わたしたちには温めあうことが大事なんでしょう。
「、寝れないんですか?」
「え、あ起きてたの?」
「さっき、たまたま目が覚めて、」
好きな人と体温が重なるときに、そこに生まれるのはいつだって寂しさであって、1ミリたりとも無くなったあなたとの距離がこのあとすぐに離れてしまうことに途方もない苦しみがある。そりゃあ、もっととか、まだとか、そんなことを言えばわたしたちはまた抱きしめ合うんだろうけれど、その言葉でしか繋がれていないようで、わたしはそこに哀しみを感じてしまう。
「あーそっかあ」
「宮野さん明日早いって言ってませんでしたっけ」
「うーん、そうなんだけど」
「うん、」
「寝れなくてさ、なんでか」
時間は夜。外ではぶるぶると無愛想な音をしたバイクが駆け走る音がした。宮野さんは眠れないのだとお決まりの顔でわたしに笑いかけて、それってよそ行き用の顔じゃないですかとなんだか酷くわたしを落ち込ませる。
「・・・そう、ですか」
「先に寝てていいよ」
「、わたしも目が覚めちゃった」
「え、そう?」
「はい。結構バッチリ」
「そかそか。それは仕方ないね」
薄暗い部屋の中でも、宮野さんがわたしに笑いかけてくれていることはなんとなく分かる。やがて開いていた携帯をしまって、宮野さんはやっとわたしだけを見てくれる。
「寒い、」
「え?まじか」
「はい」
「ううん、じゃあちょっと待って・・・よいしょ、」
宮野さんがわたしにくれるものは満足感と不安。その二つがあまりにも極端なところにいて、だからわたしは突然泣きたくなるんだと思う。宮野さんが抱きしめるその腕は、小さなわたしをすっぽりと覆って、寒いなんて戯言を吐くわたしを一瞬で奪ってくれる。愛するってこういうこと?つまりわたしは宮野さんの腕に巻かれて、馬鹿みたいに居心地のよさを痛感するそういうことがつまり、
「どう?」
「・・もっと」
「お、」
「宮野さん、もっと」
満たされてるから愛されてる、に繋がるのでしょうか。わたしは頭が良くないので、結局もっとなどと煽るような言葉を宮野さんにぶつけることしかできない。けれど、宮野さんはもっと、と言うと少し嬉しそうに仕方ないなあと言ってぎゅうっと抱きしめてくれた。温いベッドの中は、あなたとわたしでいっぱいになって、そこはかとない何かで満たされる。あとになってわたしはまた哀しくなるんだろうなあと思いながら、でもわたしはそれが欲しくなる。
「好きだよ、」
「うん」
「え、名前は言ってくれないの?」
「ふふ、好きですよ。もちろん」
だって、宮野さんは結局全部をくれるんだもの。わたしの求めた愛も優しさも温もりも、全部。だから結局、それが宮野さんだったら愛する理由や意味などどうでもよかったのだと気づいて、それからまたいっぱいいっぱい宮野さんを欲する。
@@つぶれちゃうかと思う毎日
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