「ゆういち、くん」
「・・・なに」
「ゆ、ち!」

包まれていく感覚に、身体がいつになってもついていけない。そんな彼女のことを分かっているから、零れ落ちる涙を舐めとった。甘い声が俺の名前を呼んで、もう掠れてしまって、この上ない優越感が襲うのに、名前は気づいていない。

「まだ慣れないの?」
「うるさい、」
「うぶですねー」
「だから、うっさいなあー」

重なる。その時、互いの心までそうであるかは分からないが、それらはすべて愛ゆえの行為である。何度会ってもきれいなその容姿が、俺の下で揺らいでそれから泣く。好きだ、なんて熱のこもった声で、言葉を落とした後に。

「寒くない?」
「うん。そうでもない」
「なんか、急に冷え込んだよな」
「そうですねえー困っちゃう」
「うん。ほんとに困る」
「でも、今はあったかいからよくないですか?」
「まあ」
「悠一くんあったかい、」
「・・あっそ」
「あ、照れた」
「うるせえ」

形勢逆転だあー、と名前が笑う。布団のなかで、身体を捩らせながら落ちつく場所を探している名前の髪の毛が、いつもお腹あたりをかすって擽ったい。それでも、ここだという場所を見つけたあとに、布団から顔を出してぱあっと笑う名前がどうしようもなく可愛いと思うから、やめろとは言えなくて。

「このベット狭くないですか」
「いやーべつに?」
「だって落っこちますよ。ややもすれば」
「落ちない落ちない」
「・・・まあ、そのぶんくっつけるしいいか」
「そうそう、」

いつまでも、それを見たいと思う。だから変な欲が蠢く。いまは繋がるこの距離にいる名前が、ずっとこのままなどという保証はどこにもなくて、だからどうすればいいのか分からなくなる。名前はたまに、かなしい顔をする。それは俺が違う女の名前を呼んだ時。それは卑怯だ、という顔をする。

「じゃあ結婚したら、もう少し大きいベッドにしますか」
「へ、」
「あれ、だめだった?」
「いや、悠一くんが結婚とか、考えてなかったというか・・・」
「そう?」
「、べつにベッドは小さくったっていいですよ。悠一くんと一緒なら」
「、そか」
「はい」

卑怯だっていい。それでも、この幸せがここにいるなら、俺はもう離さないのだから、もう、他はどうなったっていい。名前は嬉しそうに笑った。不安や悲しみが人を強くさせて、それから少し優しさに脆くなる。いつの間にか、俺らのあいだに生まれた溝の埋め合わせは、これが正解なのかは分からないが、今はこれがベストだった。そして、あの日の2人の愛を確かめ合うのは、あれがベストだったのだ。

「悠一くん、」
「ん?」
「抱きしめてください。ぎゅうって」

強請る名前はいつだって華奢で、抱きしめても抱きしめても俺の腕は余る。やっぱり不安は拭えない。どんなに愛しても最後に取り残されるのは俺の方で、それだから卑怯にもなる。だけどお互いが同じ方を向いているのならそれでいいんだろう。と、気を紛らして、身体をぴたりとくっつけ直す。




@@おノロノロけ





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