魅了されて魅了してる

初めて見た印象。あんまり関わりたくない位美人。でも馴れ馴れしくツッキーと呼ばれるのが少し煩わしくて、でも段々どうでもよくなって自ずと話すようになった。ちょっと過ごしただけで分かる、所謂守りたくなるタイプ。自分で認識して無い分、面倒くさいと思った。

及「あららーピンチじゃないですか」
監「…アップは」
及「バッチリでーす」
「「…きゃー及川さんだあー」」
及「見ててね、なまえ」
「…わ、たしじゃないですシリマセン」
及「このサーブ決まったら青城に来てよね!」
「来ません!」

田「はい?!あいつ!なまえのなに?知り合い?!」

青城の正セッターらしい人がコートに入ってきた。隣の影山の顔が曇る。及川ってやつ本人のせいか、それともなまえさんの名前のせいか。よくわからないけれど、確かに自分も面白くないとは思う。

影「なまえさんの幼馴染みです」
田「ままま、まじかよおお!」
日「大王様となまえさん仲良しなの?!」
影「まあ、…そうなるな」
田「ハイハイ僕更に優男くん嫌いになりマシタ」
澤「田中!だから威嚇やめろって!」

ちらりとベンチの彼女に目をやると、俺達に気を使ってかわからないが、一切及川さんに目をやることはなかった。でも心配げにこちらを見ているのが、なんとなく嫌だった。

及「いくら攻撃力が高くてもさ…、その”攻撃”まで繋げなきゃ意味無いんだよ?」

ボールを持った瞬間顔つきが変わった。ぞわっとした。指を指す先は明らかに俺だったから。

「!ツッキー頑張れ!!」
及「…!」

及川さんの行動を読んだなまえさんが、咄嗟に俺の名を呼ぶ。分かっている、と憎まれ口を叩きたかったけれど、ネット越しに見えた及川さんの顔が明らかに不機嫌で、そっちの印象の方が強くなってしまう。

月「っつ!」
山「ツッキいいいい!」
「相変わらず、威力やば…」

及「…岩ちゃん、なまえ見てた?」
岩「あの顔は見てたんじゃねーの。つか試合集中しろよ!」
及「やりい」
松「むこうのマネージャー誰?俺タイプ」
及「は!まっつんだめだめだめ」
花「及川と岩泉の幼馴染みだと。…おわったら俺らも紹介してもらおうぜ」
及「なにいってんの、マッキーとか論外!」
松「じゃあサーブで点取り返さなかったら紹介してネ」
花「その話ノッたー」
矢「…あの、試合始めたい、そうでーす…」
岩「及川さっさと戻れぼけえ!」
及「なんで俺だけ!!」

青城のコートが少しざわつく。視線を辿ると何となく話の筋はわかるが、面白くない内容である。それを大地さんたちも察したのかは知らないが、俺にサイドギリギリに寄るように促される。なんとしてもこのサーブをさっさと断ち切らないと、このゲームが厳しくなることはわかり切っていたから。

「!あがった!」
山「ツッキいい、ナイスううう」
月「山口うるさ…」
及「よく取ったねー…でもチャンスボール」
月「っ、…」

ギリギリのところで上がったボール。圧倒的なサーブの威力に身体がもう拒否を示していた。なんとか変人速攻を決めて得点にはなったが、言われなくても身体で分かる強豪の強さに終わりの快感を払拭される。

試合終了のホイッスルが、ふっと緊張感を解いて、それでも身体は未だに何かに蝕まれたままのような、不思議な感覚になる。この感覚は嫌いじゃなかった、けれどそんなことは俺にはどうでもいい。

「…ナイス、ツッキー」
月「日向達が決めただけでしょ」
「でも上げたのツッキーでしょ」
月「…真似しないでくれる?」
「あ、バレた?さすがだね」
月「…うざ」
田「おいおーい月島くん?なまえは先輩ですよ?敬語ですよ?馴れ馴れしくしないんですよ?」
「龍ウザチックだよ」
田「う、ウザチック?!」
月「あららーご愁傷さまでーす」

俺は、ただ凌ぐように部活をするだけで十分だから。冷たいドリンクに充てられて、一瞬の熱がさーっと冷まされていく。たかが、部活。俺にはこんな暑苦しい部活にハマる必要など、全くない。








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