The Secret


「…静かね、」

いつもと変わらない夜だった。ただ、テレビの向こうと街の雰囲気だけが慌ただしく1年を締めくくろうとしていた。そういえば、幼い時はお年玉をいくら貰えるかといってそわそわしていたことを、落ち着かない番組を見て何となく思い出した。

木「あれは?年越し蕎麦!」
黒「今赤葦とツッキーが作ってくれてます」
「もう年越すんじゃない?」
木「と、年越えて食ったら意味なくね?!」
黒「どうにかなるだろ」
木「だめだ!来年の調子が悪くなる!」
「どういうこと」
赤「もう少しで出来ますから待ってて下さい」
月「てかなんでこんな所だけ律儀にするわけ、」

5人で年を越すのは何度目だろうと思い起こす。少なくとも、曖昧にしか思い出せない親といた時より過ごす時間は長い気がする。CLOSEと提げたカフェのカウンターで、ごもっともなこと言ったツッキーの言葉が聞こえた。信仰心などとうの昔に捨てた私達が生きることを願うなんて、バチ当たりもいいとこである。

赤「出来ました」
「ありがとうー」
木「あ?俺の海老天小さくね!」
赤「同じです」
木「いや小さい!」
「うるさいうるさい。私いらないからあげる、はい」
木「ま、まじで?」
「はい、」
木「ん、んん…!」
黒「は?あ?!」
月「…何してんの、」
黒「あーん、はダメだろ?!」
木「う、うまいい…!」
赤「はあ…年、越しましたよ」

むず痒いクリスマスは終わって、遂に1年も終わった。変わり映えしない新年を迎えるというよりも襲われるような形で、今年も見えない闇の中に居場所を見つけて過ごしていくのだろう。それでも、蕎麦をずるずると啜る音は他方から聞こえて、あの時とは違い1人ではない事がこんなにも胸を温かくさせるから、だから私はここが心地いいのだと思う。

黒「今日だしこれ開けちゃう?」
木「お、おおお?」
「飲みたあい」
月「じゃあ、ついでにそれも開けたら良くないデスカ」
木「ツッキー乗り気じゃあん?!」
月「仕事ないですしね」
赤「グラス何個入りますか」
「いいよ私持ってくる」

ボン、とマヌケな音をたててコルクが抜ける。かたい栓を簡単に開けてしまう黒尾を見るとやっぱり男だなと思う。赤ワインが妙に似合って、なんだかいい男だと感じてしまうのが悔しい。

黒「それではみなさん乾杯しますか」
「何に乾杯するの?」
木「そりゃあ、あけましておめ」
「却下」
木「えっ」
「赤ワインは、血よ」
月「…そうくる?」
「献血、ってところで」
赤「…めっちゃ皮肉、」
月「てか性格悪」
黒「までも、俺達にはお似合いだな」
「でしょう?」
木「じゃあ良くわかんねーけどそれで!乾杯」

今年もたくさんの血を浴びる。赤々と照らされるそれは別格の味がして、皮肉でしかないと思った。それでも私達は、それを舐めとってまで生きるしかないのである。



@浴びる血の量だけ生きていることを実感するほかないのです。
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