最低な男と、優しいあなたと、可哀想なわたし?
福「大丈夫、?」
「っすみませ、っ」
福「…達央?」
涙をぽろぽろ流すと潤さんがそれを拭き取ってくれる。溢れ出る涙の原因を全部わかった上で、潤さんは心配そうにこちらを見つめていた。
「つらい、」
福「…とりあえず泣いたら?」
「…っ」
福「苦しかったんやね、」
打ち付けるような雨音と、優しい潤さんの声色と。仕事仲間からの電話は、たつが女の人を連れて車に乗っていたとかそういうので、狭いこの街じゃあすぐバレることをやってのけるたつに、わたしは泣くことでしか対抗できなかった。いや対抗もなにも、たつはそんなわたしを知らないので、わたしの発散にしかならないのに。
「こんなの初めてじゃないんですけどね、」
福「…達央に言ったことはないの?」
「言わないというより、言えない、かなあ…」
潤さんの匂いは甘くて落ち着いて、抱き締められたままその肩口に涙を濡らす。わたしは自分が傷つくことが怖くて、たつの前に対峙することなんてできないのだ。逃げて逃げて、潤さんにこうして慰めてもらって、またたつの前で笑顔でいられる準備をしている。馬鹿な女過ぎて、目も当てれない。あの日中村さんの横にいた女の人にでも見られたら、きっと呆れられて声も掛けてもらえないと思う。彼女はわたしと違って、そんな男に縋ることなんてしなくたっていい女だと感じるから。
鈴「…ただいまー」
「!たつ、」
鈴「誰か来てんの…あ、福山さん」
福「おつかれ」
鈴「、おつかれっす」
「ご、ご飯食べる?焼きそば余ってるよ」
鈴「あ、大丈夫食ってきた」
「、そう」
がちゃ、と玄関が開く音で、咄嗟に距離を取った。おかえり、といった声はとても震えていた。たつは潤さんにびっくりしたようで、潤さんはというと全く動じずに、落ち着いた様子でおつかれと声をかけていた。それでもたつはなんとなく気付いてると思う。泣いてる女に男が一人。そんな空間で何があるなんて、経験の多いたつなら、すぐに分かってしまうことだから。
福「じゃあ、俺帰るわ」
「あ、りがとうございました」
福「ちゃんと二人で話した方がいいと思う」
「…はい」
福「うんじゃあまた」
潤さんが出ていく。戻ったら、たつは怒るだろうか。それとも泣いたわたしに何も触れることなくテレビを見るの?
鈴「…彼女、話があるんだけど」
「っ、うん」
鈴「…行こう」
手を繋いではくれなかった。さっき帰ったばっかりなのに、たつはまた靴を履いてマンションを出ていく。後ろ姿をびくびくしながら追うわたしはやっぱり不甲斐なくて、隣はもう歩けないんじゃないかと酷く心は沈んでいく。
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