いつの間にか、たつがくれるものがわたしの欲しいものになっていた。だから、本質的にわたしが欲しいものをたつが与えてくれたことは、はっきりと言えば無かったのだ。
「うわ、これって 」
「はいどうぞー? 」
「わたしのキャラクターのやつ!」
「そー。スタッフさんから貰った」
そのせいか、潤さんと過ごす時間はとっても心地よくて照れくさかった。全部を紳士的に受け入れてくれる。どこで知っていたのか、わたしが好きなケーキ屋さんのスイーツを買ってきてくれたり、作り過ぎたご飯だっていつも全部食べてくれる。たつとは、明日に食べようと言って残していたのだが、そんなことを今思い出してしまう自分は野暮ったいと思う。
「…達央からは、連絡は来ないの?」
「こ、ないです。そんなものだったんですよ」
「そうなん、かなあ」
「そうなんです。これが結果です」
追いかけるような人ではない。彼は、もう簡単に次の人を見つけてしまったのだろう。だから潤さんが気にすることではない、と思う。潤さんは優しいから、いつでもわたしの幸せを願っているようなことを言う。でも、わたしはもう潤さんに幸せにしてほしいというのに、潤さんはそれを言うといつも優しく笑って頭を撫でるだけ。そう出来たら楽なんやけどね、と言った潤さんをわたしはただ見つめて、はてなマークを頭に浮かべるしかなかった。
「でも、話終わってないやろ?」
「終わった、と思ってます」
「それは彼女だけや」
「、なんで」
「はっきりさせて来てええと思うよ。そろそろ」
もう落ち着いた、やろ?潤さんはいつも諭すように告げる。大人すぎる潤さんをわたしはいつも見上げるしか出来ない。もしかして、と浮かんだ言葉を我慢して飲み込んだ。潤さんは、大人だ。わたしなんかよりいつも周りを上手く見ていて、きらきらと眩しい。
「…う、わ?」
「出ないん?」
「いや、いいです、!」
「出なきゃあかん」
握らされた携帯。震えるそれは、とっても重くて、こんなものをわたしは握っていたのかと疑問に思う。出ろ、だなんて。嫌だ嫌だと言ったら、潤さんが出てしまいそうで、わたしは強く拒めない。
「…も、しもし」
"彼女、?"
久々に聞いた声は今までのたつからは想像しにくい位弱々しかった。そんな声で名前を呼ぶなんてずるいと思いながら、それでもドキドキしている自分って何なのだろう。
「なにか用?」
"もう1回、会って話がしたいんだけど"
「え、?」
やっぱりたつの声だった。会いたいなんて、そんな言葉もっとあの日に掛けてくれたら嬉しかったのに。いま手放しに喜べる程わたしは馬鹿でも愚かでもない。それでも潤さんの顔を上手く見れない。馬鹿らしすぎるほど、わたしは動揺している。
「…考えさせて」
電話を一方的に切った。これ以上話を続けても、わたしには答えが出せない。でも、潤さんに委ねるは違う気がする。増してはまたたつの言いなりになって受け入れるのも、絶対に違う。
「行ってき」
「、潤さん」
「俺にとっては彼女には笑ってほしいねん」
「…」
「ここやで、彼女」
優しい声はすんなりと頭の中に入ってきて、大きな手が私を包む。送り出されるようだった。潤さんは、何倍も大人だから。わたしを暗示するように視線を合わせて、な?と相槌を求めた。わたしは、それを見つめることしか出来ない。
「…はい」
「うん。ありがと」
ありがとう、とはどういうことだろう。
その笑顔が温かくて、わたしは唇を噛み締めて頷くしかできなかった。それでも背中を押す潤さんをわたしは受け入れるのにただ必死だった。
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