"関係を絶ちたい"
達央から1ヶ月ぶりに来た連絡といえばそれだけで、拒むことなくすんなりとそれを受け入れた。呆気ないほど簡単に、そのひと文で、私と達央の関係は切れていった。
「なに考えてんの」
「んー仕事のこと」
「ふうん」
「うそ。少しだけ達央」
「正直ですネ」
「だって、本当に少しだったから」
仕事は目まぐるしくて、達央のことを考える暇もあまり無かった。だけれど悠一が、ずっと隣にいてくれたせいもあると思う。悠一はゆったりと私と同じ歩幅で、私を愛してくれた。
「寒い」
「やっぱり布団1枚は早かったでしょう」
「んー温めて、」
「わ、」
くるんと包まった薄っぺらい布の下で抱き締め合う。悠一の身体を重ねながら、やはり2人に衣類なんていう隔たりは要らないと思った。愛おしい温もりは、私の擦り切れた心さえ修復して、包んでくれるから。
「今日は、遅いんでしょう」
「うん」
「私も同じくらいになりそう」
「じゃあ一緒に帰る?」
「そうする」
「終わったら連絡する」
「ええそうして」
悠一の唇に自分のをぶつければ、上手く重なり合う。何度も息継ぎをしながら、深くなっていくそれは、2人の繋がりを確信させるようだった。達央とは違う。そこに確固たる、信じれる何かがある。
「寒くないの」
「少しだけ、」
「じゃあもっとこっち来い」
今までありがとうやごめんなさいなんて言葉もなかった。それほど私たちは浅くて紙より薄い関係だったのだ。実際、ありがとうなんて言われた方が気が引けるが、今となれば、そういう楽な部分もあって私は達央を好んでいたのだとも思う。私が彼の一番になろうなど、荷が重すぎたのだ。
「悠一、」
「ん?」
「好き」
朝焼けを達央と迎えるよりも、夕焼けを悠一と一緒に見上げて、今日も一つ終えたねと確認し合う方が、正解だと思えた。結局、1日の終わりを過ごす人は、私の全てを受け入れてくれた人だから。
「なに、突然」
「思っただけ」
「それは多分」
「?」
「どんだけ経っても俺には敵わんよ」
髪の毛を梳かしながら、悠一は微笑む。擽ったかったそれはいつの間にか私を支える一つになっていて、そんなふうに悠一は私を埋め尽くしていくのだろう。何度も触れた所にさえ、一瞬にして熱が伝うように、私は貴方によって蝕まれていく。
「そう」
「うん」
「じゃあ幸せね、わたし」
「やっと分かった?」
「前から知ってた」
「嘘つけ」
幸せなんて、もう来ないと思っていた。だけど、悠一は私にもったいないくらいの幸せを運んできてくれる。包まれた布の下で微笑み合えるなんて、あの日の私が知ったらきっと泣いてしまうだろう。
悠一の手を握り締めながら、私はまた一つ愛に堕ちていく。
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