たつは、わたし達が別れたあの店を待ち合わせにした。だけれど、わたしはあの場所をこれ以上傷つけたくなかったので要望を断った。たつの言うことを拒むなんて初めてだ、と思いながら、お互い譲り合って、結局たつの車の中で話をすることに決まった。
「久しぶり」
「、おう」
「…お邪魔します」
久々にわたしの顔を見て驚いたようだったけれど、たつはサングラスを取ってわたしと目を合わせた。1ヵ月しか離れていなかったのに、会ってみると、相変わらず整った容姿だなんて改めて感心してしまう。
「あの、さ」
「うん」
「本当に悪かったって思ってる」
「…、もういいよ」
「信じてくれないと思うけど、俺彼女のこと好き、だった」
「…」
「もう1度やり直しちゃあ、ダメですか」
バツの悪そうな顔をするたつをわたしは今どんな顔で見ているのだろう。潤さんは、こうなることを分かっていたのだと思う。わたしをここまで送って去っていく姿で、部屋で言われたありがとうの意味がなんとなく分かった。そんなの、わたしが何千回言っても足りない位なのに潤さんは、何個も先を見通してそれを言ったのだ。支えられてばかりだった。わたしが潤さんに出来たことはこれっぽっちもない。
「わたしはずっと好きだった」
「、」
「別れようって言ったのはわたしの方なのに、結局こうしてたつに会ってる」
「…うん」
「次裏切ったら、もう本当に縁切るよ」
「彼女、」
「わたし馬鹿だけど、そういうのは分かるんだからね」
「…ほんと悪かった。ありがとう」
潤さんの見越したありがとうを、実現させるのはわたしだった。わたしの幸せは、結局、たつのところにあるのを潤さんは分かっていたのだ。本当にあの人には敵わない。素敵すぎて、わたしは一生あの人がきらきらとして見えるのだろう。
「あのっ、もうその女の人とは、」
「そいつとは、もう絶った」
「、そうなの?」
「うん」
「…その人のこと、好きだった?」
「え、?」
「もう怒らないから。教えて欲しい」
もう前に進まなきゃいけない。脆くてすぐに壊れそうな橋だって、辿り着いた先に答えがあるなら、わたしは進むんだ。その女の人がどんな人だったかなんて、もう聞こうとも思わない。けれども潤さんも言うように、全部はっきりとさせないことには、わたしも渡る決心はつかないから。
「いい女だった、とは思う」
「じゃあ、」
「でもお前と一緒になりたいと思ったけど、あいつと一緒になろうとは思わなかった」
「…そう」
「好きなのは、彼女だけだから」
繋ぎとめるのに必死なたつをわたしは初めて見た。だからというわけじゃないけど、やっぱりわたしはもう一度信じてみたい。そう思ってしまうことで、やっぱりわたしはたつが好きなのだと自覚した。堂々と、たつに見合う女になってやりたい。
「潤さんに一緒に謝りに行こう」
「…ん」
「次は、ないからね」
「おう」
ひどい女だ。結局馬鹿な男に戻っていく。助けられた人に恩も返せない。それでもわたしは、
「幸せにする」
「、うん」
あなたが好き。やっと悟ったその全ては、これでもかと言うほど脆くて、愛おしい。
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