着信音はいつもあなたの時だけ、違うものにしていた。じゃないと、ほかの人の電話の時に酷く落胆してしまうから。

「今日さ、行ってもいい」
「今日は仕事が終わらないと、思う」
「まじかよ」
「うんごめんなさい」
「…じゃまた」

数秒の電話だけれど胸はドキドキした。仕事がいよいよ大詰めでなかなか終わらず、やっと終わったのは時計がもう日付を超えたところだった。一人の夜はピリピリと痛い。どんなに着込んでいても、寂しさで心は軋む。

「なんか、今日暗いね」
「…え、そう見える」
「見える」
「そう」
「また達央?」
「そういうわけじゃ、ないけど」

悠一と話すといつも何か見透かされてる気がして、それでも強がって嘘をついてしまう。ガタイのいい悠一の身体が隣にあると、頭のネジが緩んだように楽になる。そう、と分かったふりをして分からないふりをした。そういう変に深くまで踏み込まないところが、私たちはよく似ている。

「あいつの彼女知ってる?」
「知らない」
「顔も?」
「知らない」
「…いい子だよ」
「、あっそ」

だから、やめろ?悠一は遠回しにそう言いたいそうに話を振った。きっと、この恋で悪者になるのは私だ。第一はそれを実行させた達央なのだろうけれど、誘いにのった私も同じように叩かれてしまう。彼女は。多分可哀想と同情されるのだろう。仕事も、いつの間にか達央ともその彼女ともNGになって、一緒にすることさえ無くなってしまうのだろうと思う。もし、バレてしまえばの話だが。

「私って最低よね」
「…本当にそう思うの?」
「本当に思ってたらやめるって悠一は思ってる?」

胸が苦しい。やっぱりさっきの連絡に私は応えるべきだったと今さら思う。悠一は少し驚いた顔で私を見た。合わさった目と目は思ったより近いところで、くっついた肩のところだけ異様に熱が伝わっていた。

「俺はお前が悪いとは言わない」
「うん」
「それでも、お前の悪口とか言われて欲しくない」
「…うん」
「本当に分かってんの」

いつだって悠一の隣は落ち着く。少し押されただけで身体は簡単に倒されて、見上げた先には悠一がいた。悠一は、優しい。キスだって触れる時だって、私の全部を分かってしてくれているから。

「うん。ごめんなさい」

素直に出た言葉に、悠一は少しだけ笑ってそれを受け取った。その笑顔は私にはもったいないくらいかっこよくて、胸がきゅうと音を立てて切なくなった。だから目をつぶってキスをして、悠一をいっぱいに感じた。




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