黄「…大丈夫、すか」
二「は」
黄「いや、ずっとぼおっとしてるから」
二「あ、…おう」
なまえは次の日、息をしていなかった。幾分と痩せた身体が細々とベッドの上にいて、周りでたくさん人が泣いていた。例外なく俺も泣いた。昨日確かめたものは、儚く、音もなく消えていったから。
黄「なまえさんの写真めっちゃ綺麗でしたね」
二「あれ、俺チョイスだもん」
黄「そーなんすか」
二「てかあいつはくそ可愛いの、元々」
黄「…うっす」
なまえは有り得ないほど少ない灰になって、俺達は必死にそれを掻き集めた。箸を持つ手がみんなぷるぷる震えていて、湿ったい雰囲気の中ずっと過ごすのはとっても居心地が悪くて、もう葬式なんか出たくないと思った。棺桶に入ったなまえの手には指輪がいて、それだけ異質にキラキラと輝いていて。
「二口くん、」
二「なまえのお母さん…」
「ありがとうね。これ、片付けていたら出てきたの」
二「え」
「読んであげて」
二「…はい」
「こんなかっこいい男の子と最後に付き合えて幸せだって、この前あの子言ってたの。二口くん、ありがとうね」
ありがとうってなんだよ、と悪態をつきながら手紙みたいな封筒を受け取る。俺がどんなに想ったところでなまえはどんどん弱っていった。その過程はとても苦しそうで、俺はそれを見るのが辛かった。でもきっとなまえが1番辛いので、絶対にそんなことは言えなかった。全部あいつは抱え込んでいったまま死んだ。生命がどんどん芽吹き出すこの春に、なまえは涸れて死んでいった。ぽつんと、俺だけを残して。
黄「なんすかこれ」
二「うっせ俺も知らねーわ」
二口堅治へ
指輪ありがとう。指輪は私にもったいないくらい指元できらきらとしています。本当にもったいない。これ高いやつじゃん。いきがってるねー二口ぃ。ばかやろう(うそだよ超嬉しいかった*)
もうね、はっきりいって先が長くないような気がするので、あなたにお手紙を送ります。いっぱい言いたいことあったけど、面と向かうときっといっぱいいっぱいになって泣いちゃうと思うのでお手紙にしました許してね。
病気ってなって、もう危ないってなってから二口がよく病室まで来てくれたの、実はすごく驚きました。普段はマメじゃない人だから。連絡だって授業中にでも返してくれて、離れていてもあなたの中に私を置いてくれていることがとっても嬉しかった。部活終わりの度に来てくれてありがとう。疲れてるところにいつもごめんね。でもすごく嬉しかった。
二口とたまにぎこちなく笑うの、すごくむず痒かったけど、それでも二口がしてくれるキスが全部全部溶かしてくれました。注射も痛くて、病室も暇で、カケルくんも死んじゃって、うわーってすごく落ち込んだ時に二口は私のそばに居てくれたから、私もう少しで死んじゃうのにすごく幸せな気持ちになれたの。全部は、あなたが居てくれたからです。
春ってお花が咲いてきらきらしてて、私、それ見て死にたいなって思ってたの。そしたら、二口が私を外に連れだしてくれて、がらにもなくキザすぎる台詞を言ってくれて、春の景色の中で隣に二口が居てくれたこと、すごくすごく嬉しかった。幸せだって思えました。それは今でも同じです。
二口堅治くん。あなたは、きらきらしていました。ボールを追いかけるあなたは、わたしにはとっても眩しかったです。もっと応援したかったなあ…大阪旅行するって言ってたのも、実はすごく楽しみだったけど、もうそんな我が儘は言いません。だって、二口かっこよすぎるんだもん。ずるいくらい、きみはかっこよかった。最後にあなたと付き合えた事が私の最大の幸せです。ありがとう。
来世でまた会えたらな、とか勝手に思ってます。てゆーか、会って?そして、また私あなたを好きになるから。その時は頑張るね。
最後に、大好き。
二「ずるいの、おまえじゃん…」
春。
俺の好きな人は天国に行きました。俺は一人手紙を読みながら泣くしかありませんでした。不意に、会いたくなったけれど、彼女は、きみは、何処にいますか。
絶えず君を、想う