「終わったーーー!」
テスト最終教科の終わりを知らせる鐘が鳴ったと同時に近藤くんの大きな声が教室中に響きわたった。
「おいうっせーぞ、そこのゴリラ」
「うるさいですぜ近藤さん」
全身の力が抜けたように椅子にもたれかかる近藤くんにはそんな声は入ってこないらしく、ピクリともしない。
「おし、じゃあHRまで待ってろよお前ら。先帰んじゃねーぞ」
答案用紙を集め終わった銀八先生が前の扉に歩いて行く。
「せんせーさよーならー」
「帰んなっつってんだろ沖田」
ぜってー待ってろよと言い先生は出て行った。
「ねえ、みょうじさん」
最後まで寝ていた山崎くんがいつのまにか起きて体だけこっちに向けた。
「何?」
「よかったらさ、この後時間あったらお昼食べに行かない?もうこの後HRやって終わりだし」
「あ…ごめん、この後妙ちゃん達と遊ぶから行けないかな」
「そっか、そうだよね、ごめんね急に!」
「ううん、また機会があったら誘ってほしいな」
「う、うん!もちろん!!……ってあれ?みょうじさん何してるの?」
私は筆記用具を鞄にしまって携帯を持って席を立った。
少し遅れて後ろの妙ちゃんが行くわよと私を呼ぶ。
「ごめんね山崎くん、私もう帰るんだ。先生には早退したって言っといて!」
「ええええっ、ちょ、ちょっと」
「じゃあね!山崎くん」
三人は扉の前で待っていてくれた。私たちはHRなんか待たずに学校を出た。
「とんだ不良女達だねィ」
「今に始まった事じゃねーだろ」
テストが終わった途端に帰って行く四人を引き止めたところで無駄なことだった。
「そんなんでいいんですかィ?ふくいいんちょー」
「うるせー。言っても聞かねーだろあいつらは」
毎日のように化粧をしてくるやつ。
毎日のようにうちの委員長を殴るやつ。まぁうちの委員長にも悪いところはあるが。
毎日のように早弁をするやつ。
毎日のようにスカートの下にジャージを履くやつ。
最初、風紀委員が何度か注意はしていたが一行にやめようとはせずもう半ば諦め掛けていた。
これ以上クラスが乱れんのは委員としては勘弁してほしいくらいだ。
「そういえば最近あいつ来ないですねィ」
「あ?あぁ、あいつか」
「ま、仕事がなくなってせーせーしてやすけど。でも同じクラスにいるのはちょっとねィ」
「来ねぇとそれはそれでクラスの風紀がとかで俺らがなんとかしなきゃいけなくなるしな」
俺の後ろの席は始業式以来ずっと空席だ。
そこは三年になるまでほぼ毎日と言っていいほど喧嘩やら問題を起こし続けた奴の席だ。最近は学校にすら来ていないのか問題も前よりは少なくなり、風紀委員としては多少楽になっている。
「あ、でもこの前俺見ましたぜ?」
「あ?」
「あいつですよ。確か夜兎駅にいましたねィ、一人で」
「夜兎駅?あそこは不良がわんさかいる高校の最寄りじゃねーか。また問題でも起こすつもりかよ」
「さあ。それか、夜兎高に転校とかするんじゃねーですか?」
「そりゃねーな。わざわざ敵対してる学校に入りに行くかよ、よっぽど喧嘩をしたいなら別だが」
「それもそうですねィ」