「ごめん遅れた…!」
「大丈夫よ、私たちもさっき着いたばかりだから」
「あとは九兵衛待ちネ」
あまり時間はかからないと思っていたけど案外時間がかかってしまって結局遅くなってしまった。
「九ちゃん、もう少しでつくみたい」
九兵衛の自宅は少し遠い。
以前聞いた時は学校から早くても一時間かけて登下校していると聞いた。そんなに時間がかかると冬に雪が降った時にさらに時間がかかって大変だねと言ったら、その時は車で学校の近くまで送ってもらうのだそうだ。
「それにしても暑いね」
「もう七月に入ったのよね…」
「どうりで暑いと思ったネ」
あー暑い暑いと手で風をあおぐ神楽は生まれつき陽に弱いらしい。先祖代々陽に弱い体質らしく、夏などであまり海に行ったりはしないらしい。神楽曰く体質を無視して出歩き続けた実父の頭は陽のせいで焦げてなくなったらしい。
「あ、九ちゃん」
九兵衛が駅のホームから降りて来た。めずらしくワンピースを着ていた。
「すまない、待たせた…」
「いいのよ、九ちゃんは家が遠いんだから」
気にしないでとお妙は微笑む。
そんなお妙を見た九兵衛はさらに申し訳なさそうな顔をした。
「いや……早めに家を出たが途中で…」
「途中で?」
「……声をかけられて…」
「……九ちゃん、今後ワンピースを着るのは私の前だけにしてちょうだい」
「私たち、ね」
「そういえば、さっき高杉見たアル」
「高杉って、あの高杉か?」
「そういえばそんな人いたわね」
もうこの学校からいなくなったのかと思ってたわ。とお妙は興味なさそうに言い放つ。
「…ねえ、高杉って?」
「あぁ、なまえはまだ見たことがなかったな」
「眼帯つけてて、目つきが悪くて、中二病なやつネ。一部の女子たちがかっこいいって言ってるけど私にはわからないアル」
「へ、へぇ…」
「見かけたとしてもあんまり関わらない方がいい。」
「そうよ、まぁ最近来てないし大丈夫でしょうけど。そんなことよりあとでコンビニ寄ってもいいかしら」
「あ、私も寄りたいかも。お菓子ほしいな」
「じゃあ、寄ってから行くネ!お菓子買い占めてから行くアル!」
「わざわざコンビニに寄らないでも、僕に任せてくれれば買い占めてあとで東城にすぐ持ってこさせるが…」
そう言って九兵衛は携帯を取り出す。
「いやいやそれは悪いよ!」
そう言うと九兵衛はそうかと言い携帯をしまった。