シトリン xx先輩のことがもっと知りたい。それはきっと、ボクが彼女と仲良くなりたいと思ったからなのだろう。かつての憧れの人に会ったのだから、そう感じるのは当然のこと。だからボクはそれ以上深く考える必要はないと結論付けて、xx先輩のいる教室へ頻繁に通うようになった。 昼休み、xx先輩はいつも友人たちとお弁当を広げている。迂闊に声をかけてしまって迷惑だと思われたくないから、ボクはそっと遠くから眺めるだけだ。一緒にご飯を食べている彼女の友達が羨ましい。ボクだって、xx先輩と過ごしたいのに。不機嫌そうに自分の顔が歪んだのを感じながらコンビニで適当に買ったパンを頬張った。 xx先輩のお弁当は毎日色鮮やかで、サンドイッチの時もあれば唐揚げ入りの時もある。野菜はいつもプチトマトと小さく千切ったレタスが入っている。偶に、ハンバーグが入っているとxx先輩はぱあと顔を輝かせて嬉しそうにそれを口へ運ぶのだ。ああ、可愛いな。その笑顔をもっと近くで見ることができたなら。そう思うのに、話しかける勇気は出てこない。そんな自分が少しだけ嫌になった。 あの日彼女を背負ったきり、会話をすることのないまま時は過ぎていった。関係に進展はないけれど、xx先輩のことはたくさん知ることができた。 朝がちょっぴり苦手なこと。トーストにはちみつバターを塗った朝食が好きなこと。教室にはHRギリギリに到着すること。それでも遅刻はあまりしないこと。テストの順位は上から数えても下から数えてもあまり変わらないこと。コーヒーに砂糖は入れず、ミルクだけを加えて飲むこと。部活には入っていないこと。アクセサリーを作るのが趣味であること。放課後はよく友達と喫茶店を巡ること。他にも好きな食べ物、好きなお菓子、好きな音楽。 それから、好きなひと。 そこまで考えて、心臓がきゅっと締め付けられた気がした。xx先輩に恋人はいないけれど、彼女を見ていれば分かる。ほんのりと薄紅色に染まった頬に手をあてながら上目遣いに教師を見つめる彼女は、どうしよもなく恋する女の子だった。 思いだして、言い知れない焦燥に駆られた。確かにあの教師は女子生徒から人気で、園子くんもキャーキャーと騒いでいた気がする。アドレセンス真っただ中ということを考えれば年上のイケメンに恋をするというのはおかしな話ではないし、一過性のそれに共感することはできなくとも理解をすることは可能だ。それでも僅かに、確かに、いやだと思ってしまうのは何故だろう。名前を付けることもできないモヤモヤを抱えたまま昼休み終了のチャイムを聞いた。 back to top |