許し

リーガルは再び、皆の方へと向き合う。

「今まで何も告げずにすまなかった。私は罪人だ」
「リーガル様はアリシアを手に掛けた罪を告白し自ら監獄に入られたのです」
「檻の中で教皇はコレット誘拐と引き替えにヴァーリを捕らえると約束した。私はそれを信じ、彼女の誘拐を引き受けた」
「それで私たちを付け狙っていたんですね」
「ああ。しかし私は騙されていたのだ。アリシアの裁きは受けたが、私にはまだ昇華できぬ思いがある。……頼む。お前達が私を裁くのは、エクスフィアで人の命を弄ぶクルシスを倒してからにしてほしい」

リーガルの懇願。彼を責める資格があるのはこの場ではただ1人。だから、

「プレセアがいいのなら。俺たちはもうリーガルを仲間と思ってた訳だし」

プレセアにその判断を委ねる。

「……ヴァーリはアリシアの仇でもあったんですね。分かりました。私は……あなたを……仇とは思わないようにします。今すぐは……無理かもしれないけど……」
「……すまない」
「アリシアの最後の願いだから……もう何も言いません」

内心ではアリシアに直接手にかけたリーガルを許すことはできないだろう。でも彼も苦しんでいたから、何よりアリシアの願いだから、プレセアは許すための努力をしようと決めた。


「なあレイラ」
「どうしたの、ロイド?」

いやに神妙な様子のロイドの様子にレイラは僅かに驚く。

「レイラは、母さんが死んだ時のこと……覚えてるのか?」
「……そういえば、言ってなかったね。覚えてる……というより、忘れられない、かな。一番最初に思い出した記憶も、あの時のことだったし」

クラトスに出会っても懐かしさを覚えるだけに留まったのが、化け物になったクララを見た時は幼き頃の記憶を思い出せた。それくらいに、大事な記憶なのだ。

「その……どんな感じだったんだ?」

訊きにくそうだったロイドだが、意を決して切り出した。
問われて、レイラは記憶を頭の中で反芻しながら言葉にする。

「……お母さんが苦しんでて……私はあの人に庇われて見てるだけで……それで、あの人が謝って……剣を……」
「謝って……?」
「……うん。誰に謝ってたのかは分からない。多分、お母さんに、だと思うけど……」

誰かの名前を呼びかけていた気がする。が、恐らくその時のレイラが聞き取れなかったのか、誰の名前だったのかは分からない。

「そっか……やっぱり、苦しんだんだな」
「……ロイドは、お母さんが殺されたこと、許せない?」
「いや、父さんだって、望んでそんなことをしたわけじゃないだろ?」
「……強いよね、ロイドは」

望んでないことだったと頭で理解していても、気持ちはどうにもならないことがある。理由を知っても、許すのは、簡単なようで難しい。レイラは、それが肉親だったから憎むことはできなかっただけとも言える。
でも、ロイドは、その時の心情や事情を理解して、許せている。何て、強いのだろう。

「……いつか、話せる時も近いのかな」

気が付けばぽつりと、そんな思いが声に出ていた。幸いロイドには聞こえていなかったようだ。
少し前まで頼りなかったのに、気が付けばこんなにも強くなっていた。レイラが思うより早くその時は訪れるのかもしれない。
父親のことを話して、受け入れられる時が。

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