再びの共闘

牧場まで到り着いた。大樹暴走の影響なのか、ディザイアンも人々も外には出ておらず、非常に静かだ。
クラトスが、疑問を口にする。

「どうして私を同行させたのだ? お前達が魔導炉を停止させるなら、私は必要ないだろう」
「クルシスは信用ならないからだ。たまたま今回、俺たちもレネゲードもあんたも、利害は一致したけれど、いつどうなるのか分からないからな。監視しておくには近くにいた方がいい」
「成程。賢明な考えだ」

かつて、監視する立場だったクラトスが今度は監視される側に。皮肉だ。
先に行っていたジーニアスが声をかける。

「どうやって潜入するの? 門は閉まってるよ」

厳重な門。門番はいないから、開きさえすれば入るのは容易いが、どうやって開くか。

「俺が崖から敷地の中に飛び降りて門を開けるよ」
「いや、私が行こう。この程度の門なら飛び越えればいい」

クラトスが事も無げに言い、翼を出す。皆がそれに驚いてる間にあっという間に飛び立ち、門を開けてしまった。

レイラは、ずっと何も言えなかった。今、クラトスとまた戦うことになるなんて、気まずいなんてものじゃない。
何か話せばいいのか、それともこのまま何も話さずにいるべきか、それすらも分からない。
すっかり黙って俯いているレイラに、他の皆は、裏切りのことなどで気まずいのだろうと察して何も言わずにいてくれている。心遣いはありがたいが、だからこそ余計に心苦しい。

「またあんたと、こうやって一緒に戦うとはな」

物怖じせず、話せるロイドが羨ましい。
ロイドの声色は本当に嬉しそうだ。手放しで喜んではいないし、信用していない。それでも、かつて頼りにしていた相手だ。嬉しくないわけがない。
敵同士という意識を持ったまま、嬉しさは持っていて。ロイドは本当に強い。
そんなロイドを見ていて、少しだけ、勇気が持てるかもしれない。

「……あの」

意を決して、声をかけた。

「何だ。何か文句でもあるのか」
「いいえ。ただ……聞きたいことがあって」

こうして、話ができる機会はこれを逃したらもう二度と来ないかもしれない。話したいことはいくつもあるが、その中で、今聞けることは。

「イセリアで再会した時、私はあなたにどこかで会ったことはないかと聞きました。あなたは、それを気の所為だと否定した。本当は、そんなことなかったのに」
「そのようなこともあったな」
「……どうして、否定したのですか? 私とあなたは他人だと……」

敵対していること自体はレイラが決めて決別したから、割り切れる。でも、かつて他人だと言われたことが尾を引いて、どう思えばいいのか分からなかった。

「では、逆に聞くが、お前の正体をありのまま告げたとして、それをお前は信じるか?」

親子だと言われても、見た目の年齢差からとても有り得ない。それは天使化の影響で彼の生きてきた時間と見た目が合わないためと今なら分かっている。だが、何も知らない頃に、親子と言われ、天使だと言われる。それを想像してみて――

「……無理、でしょうね」

あまりにも現実離れしている。そんな話、普通ならとても信じられない。

「そうだろう。だから、あの時は何も知らないままがいいと判断した。それだけだ」
「はい……ありがとうございます」

今、レイラがロイドにそれを話さないのと同じような理由だった。余計な混乱を避けるため。それが気遣いからなのか、別の思惑があるのかは計り知れないが。
気になっていたことが解決して、少しだけ心が軽くなった。

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