イセリア人間牧場
この牧場での目的は魔導炉の停止と、ショコラをはじめとした収容された人々の救出。
あまり時間をかけてはいられない。そのため、停止班と救出班に別れて作業を行うことになった。
途中までは道が一緒だから、収容所で人々を解放したら別れて行動開始、という順序だ。
そして、収容所まで来ると、ちょうどショコラが鞭で打たれているところに出くわした。
「神子様!」
「ショコラ!」
激昂したディザイアンが襲ってくるが、今のこちらの敵ではない。
ディザイアンを退けて、これで安全だ。
「ありがとうございます!」
収容されていた人が礼を言う。
「……ありがとう」
ショコラは、複雑そうだ。
「他に収容されてた人はいないのか?」
「他の部屋の者は上手く逃げおおせたようです」
侵入の騒ぎに乗じて多くの人は逃げられたようだ。
「じゃあ、私たちはこの人達を連れ出すね」
「ああ、頼んだ、レイラ」
「任せて。こっちです」
ディザイアンを警戒しつつ、人々を誘導する。
「私は……」
戸惑うショコラに、ロイドが強い語調で急かす。
「俺に助けられるのが嫌なら、神子に助けられたと思えばいいだろ。早く行け!」
ショコラは未だ戸惑うが、ようやく動き出した。
停止班はロイドを筆頭に、今このために共闘しているクラトス、マーブルのことでフォシテスに少なからず因縁のあるジーニアス、強敵を相手にするなら癒し役が必要なためにリフィル、それからゼロス。
レイラも候補に挙がったが、クラトスと同行させるのは気まずいだろうと、どういうわけかゼロスが代わりにと行ってくれた。ありがたいが、わざわざそんなことしてくれる理由が分からなくて少々気味が悪い。
そういうわけで、レイラは救出班として行動している。
「ショコラはどう?」
「だいじょぶみたい」
ショコラはパルマコスタでの強気な態度から信じられないくらいおとなしくて、心配だった。牧場で辛い目に遭ったためだと思うのだが、他の人達が安心した様子な中、1人だけ不安げでいるのはどうしても気になってしまう。
牧場の外に出て、停止班を待つ。
無事、ロイドたちが出てきた。魔導炉を停止させたようだ。
あとはしいなに合図を送ればいい。と、皆が油断していたその時だ、
「そうは……させん!」
もはや虫の息のフォシテスが這いずりながらも、追ってきていたのだ。
後ろからの不意打ちでロイドが倒れてしまう。
「私も五聖刃と呼ばれた男……ただでは……死なん! 劣悪種共も道連れにしてやる!」
「ディザイアン一の英雄と謳われたお前が、そのような末路を辿るのか、フォシテスよ」
もはや哀れみすら漂うクラトスの物言いに、フォシテスは何かに気付いたようだ。
「……そうか、分かったぞ。人間風情でありながら魔力の匂いを漂わす者! お前がクラトス……か」
「それがどうしたと」
「ユグドラシル様の御信頼を受けながら……やはり我らを裏切るのだな! だから人間など……信用できぬのだっ!」
激昂し、魔力を撃ち出す。ショコラに当たろうとしたそれを、コレットが咄嗟に庇った。
「……ああっ!」
「こいつっ! 許さねぇ!」
ロイドが、フォシテスにとどめを刺す。
「ユグドラシル様! 我らハーフエルフの千年王国を必ずや……!」
最期に理想を高らかに叫び、とうとうフォシテスは息絶えた。
「コレット、大丈夫か!」
ロイドがコレットに駆け寄るが、コレットの、焼けた服の下を目にして言葉を失う。
「これは……」
服の間から見えるコレットの肩は、人間のものでなくなっていた。まるで、エクスフィアのように結晶化していて。
「み、見ないで! 見ないでー!」
咄嗟に手で隠し、叫ぶ。それは、本当に悲痛な叫びで。
そんな状態をよそに、クラトスは連絡を急かす。このままでは大地が死ぬからと。