神託の光
神託の村、イセリア――
一見どこにでもあるような小さな村。だけど再生の神子が暮らしていて、マーテル教会の聖堂を北に構える特別な村。
その村の外れで、緑と白の毛並みを持つ不思議な動物――飼い主は犬と言ってるがどう見ても犬には見えない――ノイシュは鳶色の髪を持つ少女、レイラを見つけると喜々として駆け寄ってくる。
他人に馴れないというノイシュは不思議とレイラにはすぐ懐いていて、飼い主が学校にいる間はよくこうして面倒を見ているのだ。
「ごめんね、今日はあんまり遊んであげられないんだ。コレットの護衛とか、しなきゃいけないことがあるから……」
今日は、再生の神子の16回目の誕生日、そして、神子が天から神託を受ける日。
神託の際、神子は試練を受ける。その時に神子を守る護衛として、剣の腕を見込まれたレイラが以前から頼まれていたのだ。
本来なら聖堂で祭司たちと共に待つべきだが、ノイシュのことが気になって無理を言って少しだけ抜け出させて貰っていた。
――そろそろ戻るべきか、と立ち上がった。その刹那、
「な、何っ!?」
突如、辺りが光に包まれる。眩しさに目を閉じるが、一瞬のことで、すぐに光は弱まる。
「これは……神託!?」
と、不意に、レイラは不穏な気配を感じて咄嗟に物陰に隠れる。
「行くぞ、神子が神託を受ける前に、抹殺するのだ!」
数人の男たちが南の方から、村へと踏み入ってきた。
「ディザイアン……!? 不可侵契約があるのに、どうして!?」
リーダー格の男を除けば覆面で顔を隠している彼らは紛れもない、ディザイアンだった。
「神子を抹殺、って……コレット!!」
彼らの目的に思い至ったレイラは咄嗟に村に駆け戻る。