世界最大の都
イズールドの村で少々ややこしいことがあったも、何とか船にありつけ、皆はパルマコスタに無事到着した。
まずは総督府へ向かおうと話しながら歩いているとコレットが人とぶつかってしまい、相手の持っていたパルマコスタワインを割ってしまった。
妙な因縁をつけられるも、とりあえずはワインの弁償で済ませることとなり、道具屋に入った。
「ふざけないで! そんな安い値段で売れるもんですか!」
「こんなちんけな店の品物に金を恵んでもらえるだけでもありがたいと思わないのか」
店ではディザイアンと女の子が言い争っていた。間に入るわけにもいかず、成り行きを見届ける。
「薄汚いディザイアンが偉そうに! こっちはあんた達みたいなのにグミ1つだって売りたくないのよ!」
「ショコラ! やめて!」
強気な姿勢を崩さない娘を母親が諌めるが、意味はなかった。
「だってお母さん! こいつら、おばあちゃんを連れてった悪魔なんだよ!」
「いい度胸だな、娘! そんな態度でいるとこの街やお前自身がどうなっても知らないぞ」
「やれるもんですか! ドア総督がいる限りあんた達になんて屈しないんだから」
「こいつ!」
「よせ! 今年の間引き量を超えてしまう。これ以上はマグニスさまの許可が必要だ」
「ちっ……」
「マグニスさまの御意向次第では命の保証はできないぞ」
店を出ようとするディザイアンからコレット、ジーニアス、リフィル、レイラは咄嗟に顔を逸らす。
「じゃあお母さん。私、仕事に行ってくるね」
「気をつけてね」
少女――ショコラが出かけてから、母親――カカオが客の存在に気付いた。
「お客さん、ごめんなさい。驚かれたでしょう。さあさあ、気を取り直して見ていってくださいね」
ざっと見た所品物の質は中々よいものである。
「パルマコスタワインは置いてあるかしら?」
「ええ、ありますよ」
少々値は張ったが、パルマコスタワインと、それからグミ等も買って店を出る。
「……ほらよ」
コレットがぶつかった人たちの一行の元へ戻り、ワインを差し出す。
「よーしよーし。いい子ちゃんじゃねーか。これに懲りて、二度と人さまに迷惑をかけるんじゃねーぞ」
「はい。気をつけますね」
やたらと態度の大きい相手にもコレットはいつものペースだ。
「ほら行くよ!」
「それにしても、ドア総督って大したことありませんのね〜。ほいほいと家宝をくれるなんてチョロいですわ〜」
「それで、アニキ! あれはどうするんだ」
「ばぁーか。俺たちがあんなもん持ってても役に立たねぇだろ。がらくたを集めてるっていうハコネシア峠のジジイに売っぱらうんだよ」
「さっ、行くよ!」
彼らはこちらを警戒していないのか、そんな会話をしながら街を出ていった。
「へへ。怒られちゃったね」
「……何かむかつくぜ。あいつら」
「まあまあ、ああいうのはいつか何処かで痛い目を見ることでしょ」
そんな彼らのおかげでややこしいことになるとはこの時は思わず、レイラは気楽に考えていた。