再生の書の手がかりは

教会に行き、コレットと顔見知りだったという祭司長から話を聞くも、再生の書の内容は保管されておらず、手がかりはなかった。あくまで総督府の持ち物なためか、教会は関与していないらしい。
偽者たちが再生の書を売りさばいた先だという、ハコネシア峠に向かうことになった。
その途中の救いの小屋で、意外な人物を見かける。

「――ラのみんなを救えるようにどうぞお助け下さい」

以前にオサ山道で出会った暗殺者だ。スピリチュア像の前で何か熱心に祈っている。
そこにロイドが何の躊躇もなく声をかける。

「おい、何を祈ってるんだ?」
「みんなを助けられるようにって」

暗殺者が振り向き、ロイド達がいることに気付く。

「……あ!」
「いい心がけだな」
「う、うるさい!」

取り繕う彼女の様子は敵対心というより羞恥の方が主なようだ。

「俺、ロイドっていうんだ。おまえの名前は?」
「は……?」

暗殺者も呑気なロイドの質問に唖然となる。

「あ、私はコレットです。まだ神子としては半人前なんですけど頑張って世界再生してみますね」
「おまえの名前なんか聞いてない!」
「あ、そうですよね。ごめんなさい」

丁寧に頭を下げるコレットに暗殺者も焦った様子になる。

「あ、あたしはおまえを殺そうとしているんだ!」
「知ってます。でも話し合えばきっとお互い分かり合えますよ」
「おまえ、人の話を聞いてるのか!」
「聞いてますよ〜。だって、えっと……殺し屋さん」
「しいなだ! 藤林しいな!」

乗せられてつい名乗ってしまっている。気付くことなくコレット天然に巻き込まれている彼女にレイラは内心で手を合わせた。ご愁傷様。
分かり合えると言い続けるコレットをしいなは頑なに拒む。

「もういい! 気が削がれた! 次こそ覚えていろ!」

煙幕が巻き起こり、晴れた頃にはしいなの姿は影も形もなかった。
彼女ことはここで気にしても仕方ない。先のハコネシア峠へ足を進める。

無事に辿り着き、峠の小屋にいる老人に話を聞こうとすると……

「通行証なら、1人1億ガルドで発行するぞ」
「な、なんだよその金額は! 横暴だ!」
「黙れ小僧! わしゃあ、男が大ッ嫌いなんじゃ!」
「これじゃあマーテル教の旅業をする者までここで足止めされてしまうわ」

リフィルの顔を見るや、老人は顔を緩ませる。

「おお。おまえさん美人じゃのう。おまえさんが旅業をしているのならパルマコスタの旅行代理店でアスカード遺跡ツアーにでも参加するといい」
「ずるい! 代理店と結託して儲けてるな!」

ジーニアスが指摘すると男は緩んでいた顔を釣り上げる。

「うるさいのう! 金のない奴はとっとと帰れ!」

老人と言い争っている傍ら、台に置かれた物にコレットとレイラが気付く。

「あれ? 随分大きな教典……」
「ホントだ。教会でもないのになんでこんなものが……」
「おお、嬢ちゃんたち、見る目がある! これはのう、マナの神子様から買わせていただいたものじゃ。大変珍しい教典で、導師スピリチュアの伝説が記されているんじゃよ!」

老人の言葉に皆はっと振り返る。

「ずっと手に入れたかったんじゃがドア様は手放すはずがないと諦めておったところじゃ。まさか神子様が譲ってくださるとは。ありがたや〜」

手を合わせる老人にロイドが食い下がる。

「それ、譲ってくれよ! いや見せてくれるだけでもいい」
「何を言っとるか! どうしてお前らなんぞに見せてやらねばならんのじゃ」
「いいじゃないか! コレットはマナのみ――」

ジーニアスの言葉が言い切る前にリフィルが叩いて止める。

「だめよ。こちらが偽物扱いされてしまうわ」

ジーニアスの言葉に老人が疑問符を浮かべる。

「マナのみ……?」
「マナの神子様の持ち物を見せていただきたいという信仰心の表れですわ。コレットは天使言語を修めた立派な信者ですのよ」
「あ、そうです。小さい頃から習ってました〜」
「そんなに言うならその清純派の嬢ちゃんとクールな嬢ちゃん、美人の姉ちゃんには見せてやらんことはない。
わしはな、ここに来る途中の救いの小屋に飾ってあるスピリチュア像が欲しくて仕方ないのじゃ。アレを貰ってきてくれたら考えてやらんこともない」

この期に及んで欲を優先する老人に皆呆れ返る。

「けちだなー。見せるぐらいなんてことないのに」
「うるさい! 金もない像もないじゃ話にならん。もう帰ってくれ!」

結局、激昂した老人に追い出されてしまう。

「お金にうるさい、酷い女尊男卑。最悪だね」
「本当に何だってんだ、あの強欲ジジイ」
「まあ! あなたが強欲なんて言葉を知っていたなんて……!」

リフィルがロイドの言葉に感動してしまう始末であった。

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