変装潜入
アスカード人間牧場は物々しい警備によって虫一匹入る隙間もない。
恐らくは、牧場から人が逃げ出したことと無関係ではない。
そこで取った方法はと言うと――
「さて、誰がディザイアンになるのか決めなくては」
「どういうことだよ先生」
「さっき手に入れたディザイアンの服は1着しかないのよ」
ディザイアンに変装して潜入するという方法だ。そのため、見回りのディザイアンの服を奪ったものの、全員が変装はできないため、残りは人質役だ。
「俺! 俺! 俺がディザイアンの役やるよ!」
ロイドが我先にと立候補する。
「むしろロイドは1番変装しちゃいけないと思う」
「何でだよ?」
「ロイドがいなかったらディザイアンが私たちを捕まえる理由がないでしょ」
「う、そう言われたら……」
ロイドが言葉に詰まる。
「さ、そうなれば、行きましょう」
話している間にリフィルがさっさと着替えていた。
「ずるいぞ、先生!」
「ずるくなんてありません。これが1番自然な筈です」
「……で、どうしてお前までディザイアンの衣装を持ってるんだよ」
いつの間にかいたもう1人のディザイアン役――しいなを問い詰めれば、1人ででも潜入しようとしたらしい。
ルインが襲われた時に奪っておいたようだ。
「とにかく、行きましょう」
「……うん」
リフィルを先頭に、しいなを殿に牧場に向かっていった。
早速、警備に見咎められる。
「止まれ!」
「やったぞ!」
即座に返した返答にディザイアンが訝しむ。
「……どうした?」
「手配書にあるロイド・アーヴィングを見つけた!」
そう告げたら警備の警戒が完全に解ける。
「何!」
「やったな! しかも生け捕りか!」
「早速五聖刃の方々に引き渡しに行きたいのだ。早く通してくれ」
「よし、通れ!」
あっさり門が開き通された。
作業しているらしいディザイアンも浮き足立った様子だ。
「先生、ディザイアン役、はまってるね……」
「う、うん……」
レイラが呟けばジーニアスが複雑そうな面持ちだ。
「さて、ここまで来たら大丈夫でしょう」
制御室まで到着し、リフィルとしいなはディザイアンの衣装を脱ぎ、元の服に着替えた。