おかえり

飛び去って行く2人を見て、ジーニアスがはっと思い出し声を上げる。

「思い出した! あのプロネーマって奴、アスカード牧場の投影機に映ってた奴だ!」
「じゃあディザイアンじゃないか!」
「クラトスが邪魔しに来たし、やっぱりディザイアンとクルシスは同じ組織なんだね……」
「ユアンも……クルシスと関係がありそうね」
「あー、混乱するなぁ! 要は、あいつらまとめて全部敵なんだよな」
「ええ。レネゲードに対しても油断は禁物ね」

レイラが思っていたより、ロイドたちは多くの情報があるようだ。答えを与えてはレイラの正体に勘づかれる。口を閉ざすことにした。

「ねぇ、コレット。声以外も元に戻った? ちゃんと感覚とかあるの?」

ジーニアスに聞かれ、コレットはお腹を押さえて笑う。

「うん。だいじょぶみたい。みんな、ありがとう。心配かけてごめんね。すごく久しぶりに、お腹もすいてきた気がするし」
「そうか!」

が、微妙な顔で羽を出し入れする。

「……羽はまだ出るみたいだけど」
「そ、そうか……」

そんなコレットの様子に、ゼロスが口を挟む。覚えのない人物にコレットは首を傾げる。

「う〜ん、やっぱり俺さまが見込んだ通り。コレットちゃんは笑ってると断然可愛いぜ〜」
「えっと、あなたは……ゼロスさん?」
「おお! 俺さまのことちゃんと覚えててくれたんだなぁ! 同じ神子同士、仲良くしようぜ〜」
「あ、よろしくお願いします」

わざわざ礼儀正しく、ぺこりとお辞儀つきだ。

「それで、この突然やって来たクールなかわいこちゃんは誰よ?」

ゼロスはレイラを指して聞く。知ってるだろうに、白々しい。

「レイラです。えっと……」

レイラも白々しく自己紹介しておくが、続きの言葉に詰まる。

「俺たちの仲間だよ。クルシスに捕まってたんだけど、逃げられたんだな!」
「う、うん」

どうやらレイラはロイドたちから見るとクルシスに捕らえられたことになっているようだ。実際は連れ戻された、という方が正しいが。

「へえ〜。よろしく、レイラちゃん」
「……よろしく。察するに、あなたがテセアラの神子ゼロス、でいいのですか?」
「そうそう〜! 俺さまのことは、ゼロスくんって呼んでね」
「…………」

流石にここまで軽いノリではレイラも引いてしまう。人をくん付けするような性質でもないし、この男にさん付けは違和感があるから呼び捨てでいいか、と内心で片付ける。

「でも、どうしてここに来たんだ?」
「クルシスから逃げた後、何だか嫌な予感がして……ほら、トリエット砂漠の時みたいな……。それで、皆を探して、ここに辿りついたんだ。……テセアラにいるってことは、耳にしていたから」

嘘と真実を織り交ぜて話していく。少々苦しいだろうか。

「あんたもあいつらに追われて危なかったろうに、無茶するねえ」
「あはは……でも、無事でよかった」

レイラはふ、と笑う。

「さて、どうしましょうか? とりあえずコレットの心が取り戻せたのだから、無理にシルヴァラントへ帰らなくてもいいのだけれど」
「決まってる。この後コレットみたいな神子を出さないためにも、2つの世界を同時に救う方法を探すんだ」
「うん、そうだね。しいなとも約束したもんね」
「コレット……」

約束を覚えていてくれたコレットにしいなは気恥しそうになる。

「プレセアは? いつまでも連れ回してたら可哀想だよ!」
「……私……帰りたい……です」

帰りたいという意思表示だけをするプレセア。その瞳は、どこか無機質な天使たちを思い起こさせる。

「そういえば、あのケイトって奴にプレセアちゃんを会わせないといけないんだったな」
「でも、グランテセアラブリッジはもう通れないんじゃないかしら」
「そうだね……メルトキオにあたしの仲間がいるんだ。その力を借りてみよう」
「でもボクたち、反逆者なんでしょ。メルトキオにだって入れないんじゃないの?」

ジーニアスの疑問に、ゼロスは自らを指さす。

「そいつは俺さまに任せとけ。メルトキオは俺さまの庭みたいなモンだ」
「よし、頼むぜ、ゼロス」
「おっけーおっけー。どーんと頼まれちゃうぜ。さあ、俺さまのハニ〜たち、メルトキオへ出発だ!」

へらへらと笑うゼロスをよそに、ロイドはコレットに向き合う。

「コレット」
「どしたの? ロイド」
「……おかえり」
「……うん! ただいま!」

コレットはロイドに、溢れんばかりの笑顔で返した。

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