強き決意

「丁度いい! ユアン! 貴様ともここで決着をつけてやる!」

ロイドはプロネーマを倒した勢いのまま、ユアンにも剣を向ける。
だが、それは思わぬ者に防がれた。

「クラトス!」
「……貴様、何をしに来た!」
「退け、ユアン。ユグドラシル様が呼んでいる」
「くっ……神子を連れて行くのか?」
「いや……一時捨て置く。……例の疾患だ」
「……そうか。ロイド、勝負は預けたぞ」

ユアンは些か残念そうに、羽を広げ救いの塔の方角へ飛び去ってしまった。

(疾患……? 何だというの?)

レイラが離反していなければ何のことか聞けたのだろうが、それももはや叶わない。

「あいつも天使だったのかい!」
「くそ! 待て、ユアン!」

飛べないロイドには、ユアンを追いかけることはできない。

「……お前は何をしているのだ?」
「な、何?」
「わざわざ時空を飛び越え、テセアラまで来て何をしているのだと言っている」

クラトスに問われ、ロイドは一瞬言葉に詰まりながらも答えを絞り出す。

「それは……コレットを助けるため……」
「神子を助けて、どうなる? 結局2つの世界がマナを搾取しあう関係であることに変わりはない。ただ再生の儀式によって立場が逆転しただけだ」
「テセアラは衰退し始めてるのかい!?」
「まだこの世界からも救いの塔が見える。あれが存在する限り、ここはまだ繁栄時代にあるということだ。尤も、神子がマーテルの器となった暁には、テセアラも繁栄時代に別れを告げることになるだろう」
「くそっ。どうにもならないのか!? この歪んだ世界を作ったのはユグドラシルなんだろ!」
「ユグドラシル様にとっては、歪んでなどいない。どうにかしたければ自分で頭を使え。
……お前は、もう間違えないのだろう?」

クラトスに言われ、ロイドの顔つきが変わる。強い、決意の宿ったものに。

「ああ、やってやる! 互いの世界のマナを吸収しあうなんて愚かな仕組みは、俺が変えさせてやる!」
「フ……せいぜい頑張ることだな」

クラトスはロイドの返答に満足げに笑い、飛び去って行った。プロネーマも、それに続く。

(……お父様)

ロイドに助言めいたことを残すその姿は、迷っていたレイラを導いてくれた時のことを思い起こさせる。
あるいは、クラトスも世界の変革を望んでいるのか。なら何故、クルシスに加担するのか。
ずっとその背中を追いかけてきたのに、その本心は全く見えなかった。

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