エピローグ

メダリオンは無事にミストから、リュシオンとリアーネの手に戻された。
これで、リーリアの、そしてエルナの願いは叶えられた。
まだセリノスには戻れないけれど、ティバーンやカイネギスの計らいで、フェニキスより森に近いガリアに2人は移り住むことになった。
この戦争で失ったものは多かったけれど、得たものも大きかった。ベオクとの絆。鷺の民の安寧。
ミリアは今までになく、晴れ晴れとした気分だった。

この戦いに関わった者たちひとりひとり、アイクに挨拶を告げていく。
ミリアもそのうちの1人だ。

「アイク。本当に感謝している」
「こっちこそ、あんたには色々助けられた」
「王はあんなことを言っていたが、もしキルヴァスの近くまで来たなら寄ってくれれば、フェニキスのように盛大に、とはいかなくてもそれなりの歓迎はしてやるからな」

アイクが来るなら国を挙げて歓迎すると告げたティバーンに対してネサラは来なくていいの一点張りだったが、ミリア個人としては是非招待してやりたいところだ。あまり余裕はないから慎ましいものになるのが惜しい。

「そうか、楽しみにしている」
「来なくていいからな!」
「……くくっ、王ってば……」

頑なに止めるネサラにミリアは笑いがこみあげてきた。

「あんた、そうやって笑えるんだな」
「……自分でも驚いた」

こうしてくだらないことで笑うなんて。気が張り詰めていた戦いの間だけじゃない、その前にも、なかった。

「……全部というわけではないが、重荷のいくつかが下りたからか。お前のおかげだ」
「そうなのか?」
「そうだ。セリノスでリアーネ姫を守ってくれたことに始まり……お前のような将の下で戦えることなどそうそうないからな」

アイクはその自覚はないだろうが、本当に、色々なものを変えてくれた。大陸の情勢だけじゃなく、ミリアの内面までも。

「ありがとう、お前のようなベオクと出会えて本当によかった」

ベオクの友と堅く、握手を交わして、ミリアはキルヴァスを目指して飛び去っていった。


「ったく、ちょっと離れてる間に随分様変わりしたもんで」
「当たり前でしょう? 色々ありましたから」

ミリアがネサラの元を離れていたのはデインの初雪が降る少し前から、雪が解け、クリミアの花々が咲き春が来るまでの間。長いようで短いこの間に、本当に様々なことがあった。

「……ま、悪くないとは思うぜ」
「そんなに変わってますか?」
「変わってるな」

ミリアがネサラの心の内を鷺の民のごとく読み取るように、ネサラもミリアの変化を過敏に感じ取っていた。
憑き物が落ちたようにすっきりしたミリアの表情は、久しく、それこそ20年前以来見なかったものだから、尚更。

「……王にもお話しますよ。何があったか」

何から話そうか、ミリアは考えながらも、決して楽ではなかったけれど、大きなものを得た道のりを振り返り無意識に穏やかな笑みを浮かべた。

to be continued…

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