国とは王とは

デインとクリミアの戦争から3年。
デインはベグニオンから派遣された駐屯軍の総督の凶行により不毛な略奪や虐殺が繰り返されていた。
そこに現れた救世主、暁の団、そしてそのリーダーである銀の髪の乙女――またの呼び名を、暁の巫女、ミカヤ。奇跡の力を使い民の心を集めていた。
同時期に存在の判明したデイン王の遺児、ペレアス。彼らは結託し、見事ベグニオンの手からデインを取り戻した。
そしてペレアスは王となり、デインは復活を成した。

「……やはり、出来すぎてる」

何度考えても、この度のデイン復活はあまりにできすぎだとミリアは感じた。
隠されていた王族、それを支えるカリスマ的救世主――まるで3年前のクリミアを模倣したような復活劇。
まるで、誰かが裏で糸を引いている……そんな気がしてならない。
事実、デイン復活の傍らには決して無視できない噂も多く流れている。もっと詳しい調査が必要だろう。

『ミリア……?』
「あ、リアーネ姫……すみません」

心の内の、絶対に見られてはならない部分には読まれないように閉ざしてはいるが、そうでない部分――不穏な思考を読んだリアーネが不安げにミリアに声をかけてきた。
今、ミリアはガリアを訪れていて、リアーネにこうして歓迎を受けているのだ。余計なことを考えずに楽しむべきだった。

「折角のお茶なのに、嫌な気持ちにさせてしまいましたね」
『ううん、大丈夫よ』

リアーネは一片の不快感も感じていない様子だ。どちらかというと、心配になり声をかけたようだ。
ミリアはまた溜め息をひとつ吐いて、お菓子を頬張る。考えることはやめても、胸騒ぎは収まらない。

「よ、失礼するぜ」
「ライ?」

ノックがしたかと思うと、扉が開かれる。入ってきたのはライだ。

「折角ゆっくりしてもらってる所申し訳ないんだが……カイネギス様からのお呼び出しだ。リアーネ姫だけじゃなく、あんたにも来てもらいたいんだとさ」
「私にも?」

ミリアは怪訝な顔になる。ミリアが獅子王に呼ばれる理由など思い当たらない。

「オレもよく分からねぇけど、数刻前にトパックたちが来たことと関係あるのかもな」
「…………」

ますます分からなくなって、ミリアは唸る。
とにかく、王からの呼び出しなら無下にしてはならない。ミリアは軽く身辺を整えて、リアーネを引き連れて玉座へと向かって行った。

[ 46/84 ]
prev | next
戻る