悔いなきよう 2
夜明けより少し前、レイラは目を覚ました。
いつの間にか眠ってしまったようだ。隣にはロイドがいて、反対側にコレット。ロイドの向こう側にジーニアス、という調子に何故かみんな集まって寝ていた。
クラトスだけは、眠らずにいた。当たり前のこととはいえ、それが何だか悲しいことのように思えた。
「目を覚ましたか」
「お父さん……私、寝ちゃって……」
「仕方のないことだ」
「だけど……勿体無いなって……」
「ならば、今から話の続きをするか」
せいぜい夜明けまでだから、そこまで多くは語れないだろうけど。それでも。
「……する」
別れの時まで、少しでも思い出を、心に留めたい。
*
別れは、あっけなかった。それぞれの帰るべき場所へ帰った仲間たちとの別れも、永遠の別れとなるクラトスとの別れも。
「……ロイド、コレットのこと大切にしてね」
「ああ」
この後ロイドはイセリアの家へ帰り、母に報告した後、エクスフィア回収の旅に出る。傍には、コレットも共に。
「何かあったら、知らせてね。手紙でいいから。困ったことがあれば駆けつけるし、いい知らせがあれば喜ぶ」
「ああ、定期的に旅のこと知らせるから」
「私たちの間に隠し事は絶対になしだよ。隠し事してもろくな事にならないんだから」
「そうだな。約束する」
今しがた父と永遠の別れを告げたからか、レイラはロイドと自分を必死に繋げようとしてしまう。
「レイラこそ、あんまり無理するなよ。俺にできることがあったら、助けるから」
「うん」
「ゼロスが何かやらかしても、見捨てないでやれよ。あいつ、レイラに甘えて調子乗りそうだし」
「言われなくても」
結局、お互いがお互いを心配してしまうのだ。
「……それじゃあな、行ってくる、姉さん」
「行ってらっしゃい、ロイド」
どこか清々しいような気持ちで、レイラはロイドを見送った。