出会い 1

その日は天候が崩れ、容赦なく降り注ぐ雨が勢い良く土を叩いていた。

「やっべ、先生に怒られる……」

寝坊した上にこの大雨。雨具は意味を為さず、ロイドの逆立った髪も下りてしまった。
こんな状況でも文句1つ言わず森の中を走り抜けるノイシュには感謝しなくてはならない。

森の出口近くに差し掛かった時、ロイドは嫌な寒気を感じる。
雨に打たれすぎて体が冷えたというのも違う。

「ノイシュ、ちょっとごめん!」
「ワフ?」

咄嗟にノイシュから飛び降りる。突然降りたロイドに抗議することなく後につく。
ロイドはそのまま、直感の赴くままに森の中の道をそれた所に走り出した。
目指す先は――崖の下。

 *

「ロイド、遅いね」
「また寝坊してるんじゃないの? 姉さんに怒られるよ」

もうとっくに授業は始まっている。なのにロイドは来ない。
ロイドが遅刻するのは珍しいことではないが、それにしてもやけに遅い。

「せ、先生!」
「ロイド! 廊下を走らないで! それに今何時だと――」
「先生! 大変なんだ! 森の中で人が……!」

突如けたたましい足音と共にロイドが来て、焦った様子で叫ぶ。
びしょ濡れのロイドの背には、傷だらけの少女が背負われていた――

緊急事態に流石のリフィルも授業を中断せざるを得ない。
生徒たちに自習を命じて、少女を背負ったロイドと共に自らの家に向かう。
ロイドが雨具を少女に被せていたが、それでも既に手遅れな程びしょ濡れの少女の体を拭き、服を換えてベッドに寝かせる。
濡れて体温が低下したことで衰弱している。そして何があったか分からないが体中が傷だらけ。
発見がもっと遅れていたらどうなっていたか分からない。
暖炉に火を入れ、少女に癒しの術を施す。軽いものはすぐ治っていったが、完全に治すにはリフィルの技量が足りない。

「ロイド、よく見つけたわね。遅刻はよくないけど、今回ばかりは事情が事情だわ。あなたも体を拭いて。服も貸すから」
「先生、この子、助かるよな?」
「この子の体力次第、ね……」

ロイドにタオルと換えの服を渡す。リフィルのもので大きさが合わないがこの際仕方ない。ジーニアスの服はロイドには小さすぎる。

「さあ、私にできることはここまで。学校に戻りましょう」
「え、この子は……」
「村の人に頼みます。後は看病するだけだから……」

ロイドは授業に戻り勉強したくない気持ち、少女についてあげたい気持ちなどがないまぜになりながら学校へ戻っていった。

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