出会い 2

崖の下に、1人の女の子が倒れ伏しているのを見つけた。慌てて駆け寄る。

「おい! 大丈夫か!?」

体を揺さぶり声をかけるも反応は返ってこない。
それどころか揺さぶった体は熱い。

「キューン……」

ノイシュが駆け寄り少女を心配そうな眼差しで見つめる。

「すぐに、先生の所に連れていってやらねぇと!」

ロイドは着ていた雨具を剥ぎ取りそれで少女を包む。そうしてもあまり意味はないが、ロイドはそんなことまでは思い至らない。
少女を背負うと、急いで村の方へと走り出した。
ロイドはいつになく焦り、ノイシュに乗せて運んで貰う方が早いとか、先に村の大人に言うべきだとかそんなことにも考えが回らなかった。
ただ、この子は何としても助けなくては――その強い想いがロイドを突き動かしていた――

 *

「う……ん……」

体が感じる堅いベッドの感触に身じろぎする。
そのまま、閉じていた瞼を上げていく。そうするごとに視界が闇から光へ――

「あっ! 目が覚めた!」
「だいじょぶ? どこか痛いところはない?」
「何日も眠ったままだから心配したよ」

光に目が慣れて真っ先に飛び込んできたのは人の顔。男の子と女の子が喜びの声を上げる。
それを女性が諌める。

「あなたたち、落ち着きなさい」

見覚えのない人達。見覚えのない場所。あらゆるものに首を傾げる。

「あの……ここは……あなたたちは……」
「ここはイセリア村にある私の家。それで、私はリフィル。この村で教師をしているわ。あなたは?」
「私は……レイラ……」
「レイラっていうのか! 俺はロイドっていうんだ! よろしくな!」

ほとんど無意識に出した言葉に反応して少年の声が響きわたる。
その声の方を向くと、同い年くらいの少年が笑顔でいる。

「あ……」

その顔を見た途端、何故か分からないが心の奥から何かがこみ上げてきた。どんどん大きくなる何かは抑えられなくて。

「どしたの!? どこか痛い?」

何かは、涙となって溢れ出した――


「ごめんなさい、突然……よく分からないけど、涙が止まらなくて……」

段々落ち着いて、涙を拭いながら謝罪の言葉を述べる。

「それはいいのだけど……ロイドの話によればあなたは森で傷だらけで倒れていたそうね。何があったのかしら?」
「森……傷だらけ……?」
「そうだぞ! 雨も降ってたから熱もあってよ!」
「あ……あれ……? 私……私……」

少女は自分の記憶を手繰り寄せようとして、軽く混乱する。
記憶を引き出せない。否、

「私は……誰……? 何してた……? 何も……分からない……」

引き出す記憶がなかった。