子守 2

半狂乱の酒盛りがあってから数ヶ月。

「全く、こんなに長引くとは思わなかった。さっきリアーネの顔を見たら元気にしていたが、こっちはどうだ?」

数ヶ月かかった案件をようやく終えセリノスへ帰ってきたネサラが、子供部屋へと足を運ぶ。
中ではミリアが子供たちに子守唄を聴かせているところだった。子供たちは安心しきったように眠っている。

「よし、元気そうだな。ほら、久々の父さんだぞー」

ネサラが不在の間に特に病などはなかったことはリアーネやニアルチから予め聞いていた。実際に赤子を見れば、それが嘘偽りないことは伺える。
数ヶ月ぶりの我が子を持ち上げ高い高いをした、が――

「おぎゃあっ!」
「……え?」
「……! 何をする!」

赤子が泣き出し、ネサラが固まる。それを見咎めたミリアがネサラの手から赤子を奪う。

「よしよし、怪しいおじさんに高い高いされて怖かったなあ?」
「あ、あやし……おじさ……」

ミリアが抱いてあやすと、赤子は安心したように泣き止む。ネサラはというと、ミリアの物言いに再び固まる。

「お姉さんがついてるからな、大丈夫、大丈夫」

数ヶ月ではありえなかった優しい笑みを浮かべて赤子を揺りかごに戻してやるミリア。その様子から、立派に子守を勤めてくれていたことが伺える。それはいい、それはいいのだが、

「俺が『おじさん』でお前が『お姉さん』はおかしいだろ! 同じ日に生まれただろうが!」

他にも言いたいことはいくら言っても言い足りないくらいあったが、咄嗟に口から出たのはこれだった。
人に子守を押し付けていいとこ取りしようとするような奴には当然の仕打ちだ。そんな思いを込めてミリアはここ一番の冷ややかな視線をネサラへ向けた。

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