1






「夏目殿は叶え屋をご存知ですか?」


中級に昨日下校中に言われた言葉を窓から下手な落書きをしている中級たちを見ながら思い出した。

ニャンコ先生曰く、叶え屋は妖の願いを特殊な力で叶える人のことらしい。

もしも、そんな人が近くにいるのなら是非会ってみたいと思った。

会って妖のことについて見える人と話して見たいと思った。

この気持ちを共有したいと思った。




▽▼▽



「なあ、夏目って知ってるか?」


ぼんやりと窓の下で何かを書いている妖を見ながら風を受けていると、前の席の転校して来た田沼に話しかけられた。

夏目、、夏目貴志。

彼は少し前に噂で偶に何かを見つめるように虚空を見つめるらしいと聞いた。
それは妖を見ているのではないだろうか、と勝手ながらに一方的な仲間意識を持っていた。

田沼もそういうところがあるので割と親しみを感じている私がいた。

頬杖をついて空を見上げれば人当たりよさそうな笑顔で返された。
知ってる、けど知らない、そんな曖昧な回答に何だそれ、と笑う田沼。


だってそうとしか言いようがないのだ。
話したこともないし、ただ一方的に仲間なのではと期待している。本当にそれだけの人。そういえば女子たちが物静かで落ち着いていて格好いいと話していたような気もする。

「何で夏目?何か気になるの?」
「あー、いや。少しな、噂が気になって話しかけに行ってみたんだけど…」

頬をかいて眉を八の字にした田沼に、ふーんと興味なさげに返して再び変な落書きをしている妖を見下ろした。

「…一緒に行ってあげてもいいよ。今日は委員会があるから行けないけど、明日の昼休みなら付き合ってあげる」
「ほんとか?ありがとな。1人だと他クラスまだ行きにくくて…結局会わずに戻ってきたんだ」

私も会ってみたいと思っていたし。
それは言葉にならなかったけれど、嬉しそうに笑う田沼を見ていると別に言わなくてもいいか、と思いその言葉が発せられることはなかった。





next