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下校中、休み時間に見た変な落書きをしていた例の妖たちが噂の夏目貴志を囲んで騒いでいるのを見かけてつい見つめていると彼と目があってしまった。

さっと目を逸らし、そそくさと退散する私に妖が何か叫んだように思えたが取り敢えず面倒ごとは嫌いなので無視を決め込んだ。

妖に関わると碌なことがない
そう言っていたのは確か私のもう亡くなった祖母であった。

私の家は代々『叶え屋』というものをしていて、今はもう力を継ぐことの出来る親戚が私しか居らず仕方がないので私がその力を受け継いでいる。
願いを叶える代わりに、妖から何かを貰うのが決まりでそうやって妖との良好な関係を築いてきたらしい。

しかし、それは私が中学生の頃までだった。

その頃にはもう母も祖母も死んでしまって、私が妖の願いを叶えるようにしていた。我ながら上手くやれていたと思う。お陰でその土地で悪戯をする妖はそんなにいなかった。
しかしある日、何時もの如く願いを叶えるため妖に案内されてその場へ赴くとその妖の態度は豹変し私をその山から出られなくした。

所謂神隠しというやつだった。

私の力を我が物にしようとしたらしい。
結局、的場という祓い屋に助け出されたがその時から私は願いを聞くのをやめた。今ではあまり思い出さないようにしているがそれなりに怖かったんだと思う。

祖母の言葉の意味も何となくそれでわかった気がした。



昔のことを思い出しながら、橋の上で耽っていると後ろからバタバタと足音がして振り向く。すると、先程避けた夏目とその他妖がいた。
追ってくることはないと思ってたからびっくりして目を見開いてしまう。

「叶え屋様〜〜どうか我らの願いを聞いてくだされ〜〜!」
「お願いします〜〜」

謎の旗を振って夏目の背後で騒いでる2匹の妖に思わず頬が引き攣った。

「…君が、叶え屋なのか?」

そんな2匹を他所に真剣な面持ちで私を見つめる夏目に視線を落とした。

「だったら?言っとくけど叶えないし、面倒ごとは御免だよ?」
「…本当に見えてるんだな…、こいつらが」

何か安心したような、泣きそうな感極まった彼の顔を見て心臓のあたりがぎゅっと押し潰されそうになった。

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