依存兄妹(仮)…01



「■■、起きや」

ゆらゆらと心地良い揺れに意識が浮上する。
薄っすら目を開けると、大好きな人が居てふにゃりと笑う。

『おにいちゃん…おはよ』
「ンン゛ッ…おはよ」

朝イチでとろけた笑みを見せられ、大ダメージを受けたが毎日の事なので気合いで堪えた。

『ん』

すっと伸ばされた両腕は合図で、脇の下に腕を差し込んで抱き起こす。妹は平均より小さい。平均より大きい兄と比較するとアンバランスなようで、丁度良かった。

羽根のように軽い■■を悠々と抱き上げ、ロフトの階段を下りて洗面所まで運んでやる。
トントンが先に顔を洗うと、■■も習うように顔を洗う。
濡れた顔をタオルで拭いてやると、重そうだった瞼が開いた。
まぁそれでもぼんやりしてそうな目が妹の通常モードで、また柔らかい笑みを浮かべている。

両親にさえ無表情が常な■■が、自分だけには見せてくれる色々な表情に、自分だけが特別な存在なんだと優越感が心を満たす。
妹の為に買った化粧水を手に取って、自分の手で馴染ませ人肌の温度にしてからツルツルの肌に掌を充てがった。

『ふふ、お兄ちゃんの手すき…、大っきくてゴツゴツしてる』

まるで猫のように自分から掌に頬を擦り寄せてくる。
内心悶絶しながら掌に残った液を首や手にも塗り込んだ。
次に歯を磨く。シャコシャコ動かしながら横を見れば、気づいた■■が口をパカッと開いて動かない。

「俺のはあかん言うへるやろ?」

口内に歯磨き粉を残しながら言えば■■は首を振る。
しゃーないなぁと言いながら、今まで自分の歯を磨いていたブラシに粉を足し妹の口に突っ込んだ。
磨いてやりながら口では汚いだの、菌がどうだのと説教を垂れるが、内心では自分が直前まで使用していた歯ブラシが妹の口内を蹂躙しているという事実に興奮している。

引っ越しと同時に新しくした色違いの歯ブラシ。
妹のピンク色は開封されているものの一度も使われず、新品のまま歯ブラシ立てに立ったままだった。
そしてこれからも使われる事のないまま、朽ちていく。

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