依存兄妹(仮)…02



ブオォーと駆動音が洗面所に響く。
自分の髪のセットを終わらせ、妹の髪に温風を当てる。
柔らかい髪質は癖が付きやすく、セットしてあげなければ寝癖で大変な事になる。ブローしながら枝毛のチェックも欠かさない。

「ん、よっしゃ終わったで」
『ありがと』

ドライヤーを戻し、二人で部屋に戻りながら朝食のメニューを考える。

「パンとご飯、どっちがええんや?」
『パン!』

ならパンだと、他に卵とベーコンがあったなと思い出しながら冷蔵庫を開けた。
その間に■■はクローゼットを開ける。
兄の本日のコーディネイトを考える為だ。
毎日考えるのに時間がかかる。
かっこいい服を着て欲しいが、それで女に寄り付かれてはたまったもんじゃない。それでなくとも兄はとてもモテる。
だから何時も絶妙に微妙なダサさのコーデを考えるのが難しいのだ。

『お兄ちゃん、今日の服置いとくね』
「ん、ありがとな」

手際よく朝食を作りながら、ソファに座った妹を見る。
パジャマ代わりに自分の部屋着を着るので肩が半分襟から完全に出ている。極めつけは大きいから一枚で良いとズボンを履かない。
お陰でちらちらとパンツが見えるのだ。
いや、何のパンツを履いているのかは把握している。
■■の着替えを洗濯するのも畳むのも用意するのも自分なので。
だが分かっていてもチラリズムというのは唆られるものがあって大変下半身によろしくない。

「ええ加減パジャマ買うたらどうや?」
『やだ』

こちらを見た■■の頬が膨れる。
じっとりした目には断固とした抗議の意思が宿っていた。

(かわえ…ちゃうわ、いやちゃうことないけど。
かなり目の毒やから何とかせな…)
本音を言えば彼Tみたいでとても良い。めちゃくちゃ良い。えろい。
だがあんな姿で隣に寝られては身が持たないのも事実で。

「なぁ■■『着ない』…」

今度買い物行くかと言おうとしたが先制されてしまった。
まぁ例えパジャマを買ったとしても一度も着ない事が容易に予測出来る。結局この世界一可愛い妹に勝てるものなど何もないのだ。

「ほら、ご飯やで」

出来上がった朝食をテーブルに運び、二人揃って手を合わせた。

「『頂きます』」

パクっと食パンに齧りつく■■を見つめる。
齧った痕が小さくて可愛い。自分の一口と全く違う。
口の端についたパンくずを摘んで自分の口に持っていく。
ベーコンエッグを一口に切り分け、口元に持っていけば自然な動作で食いついた。

「『ご馳走様でした』」

■■が食器をキッチンヘ運んでいる間に、用意された服に袖を通す。
服に興味がないため何の文句もないが、付き合いの長い友人達には絶妙にダサいなと何時も言われる。

鞄を肩にかけ、洗い物をしてくれている■■に一声かけた。

「ほな行ってくるわ」

濯ぎ終わった皿を置いた■■が急いで手を拭って駆け寄ってくる。

『遅くなる…?』
「せやな、バイトあるから夜になるわ」

しゅんとする■■の頭を撫でて、終わったら連絡するからなと言えばにっこり笑みが帰ってきてほっとした。

『行ってらっしゃい』

腕を引っ張られて身を屈めるとちう、と頬に柔らかい感触に言葉を失う。

「ぅ、え…?」
『早く帰ってきてね』

背中を押してくる■■を振り返れば悪戯な笑みをしていて、パタンと玄関のドアが閉まった。カチャンと鍵の音がしてちゃんと戸締まり出来て偉い。

「秒で帰ろ」

固く決意して大学へと向かった。

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